第2話 ヘタレ妖精王の家臣
俺たちは、無事に3層に着いた。
「もぅヤダ~」
「かえりたい」
2人の妖精族はエルフたちと別れてからずっとこの調子だ。
「仕方ないだろ、ここ突破しねぇとお前らずっと2つの層から追われたままだぞ。それに、妖精王がどんななのか見てみたいし」
不服そうな2人は呆れて俺の肩に乗って話始めた。
「この森を抜けて町がある。そこに村はある」
「どんどん数がへってるけどねぇ~」
「あと…」
「お、おわっ…」
地面に糸が張ってある。
俺がこいつらにかかった罠だ。
「こんな感じに罠がたくさんあるの~」
「早く言えって」
俺は足元に気をつけながら歩き進めるが…
「なんだこれ!」
木の枝にもなにか仕掛けられてる。
ネチョネチョ、ドロドロ
「それはこの森にしか生えていない、樹液を交配して育てたお手製の木よ」
偉そうにレータがえっへんと腕組をして自慢げに答えた。
「なかなかおちないよ~」
「だいたいの種族がそれにひっかかって捕まるのよ」
「なぜ。捕まるんだ、汚れるだけじゃないか」
(馬鹿な人間、それはただの樹液じゃない)
心臓のマナまでもが俺を馬鹿にしだした。
おれの味方は居ねぇのかよ。
「はっ」
フィーネが思い浮かぶ。
そして、そっとネックレスをなぞった。
まだ使わねぇ、こんなの序の口だもんな…
たぶんだけど。
「これでなんで、他のやつが捕まるんだよ。」
「それに触ったらダメなの~」
俺が手に触れようとした瞬間ナーレが口を挿んだ。
「それには、魔法が練り込まれてるのよ。魔女しか解けない」
「は!?なんで、そこで魔女が出てくるんだよ」
「そうゆう契約を交わしたからよ。」
「自分の国が守れないから~」
「察し…」
とことんヘタレな妖精王だな。
国を他人任せで守らせるんて。
てか、魔女の魔法どんだけ万能なんだよ。
その後も、樹液と糸に気をつけながらもやっと森を抜けた。
服についた樹液は幸い膝下だったため、もらったサバイバルナイフで切り落とし、証拠として、大きな葉っぱに包んだ。
「そんなもの、なんで持ち歩くのよ。もう必要ないじゃない。」
「国王に突きつけるんだよ。」
「「え!?」」
(相変わらず、馬鹿な事考えてるのね)
(ずる賢いと言え)
(はいはい…)
俺のルフはとことん俺を馬鹿と言いたいらしい。
「まあ、後でのお楽しみだ」
そういって、にやりと笑った俺に、ぞっとしたのか肩から降りた。
そうすると、小さな街並み?
「鳥の巣?」
「失礼な!!!」
「ここが妖精族が住む街なの~」
「ちなみに一番大きな建物が妖精王様の城よ」
城っていうか、ただの大きな巣穴というか、まりも?
これ言ってもこいつらには通じないけど。
(大きなルフを感じる、気をつけなさい)
(急にどうした)
(誰かがあなたのように、ルフに認められたものがいるのかもしれない)
(それは、お会いしてみたいね)
(馬鹿)
「ナーレか?レータか?」
少し歩くと、一匹の妖精が近寄ってきた。
「「ミール?」」
「そうだよ!!!久しぶりだな、お前ら売られたじゃ…」
「これは分け合ってね」
「今国王に会いに行くとこなの~」
そう話している少年は俺を見て、びっくりしている。
「こいつ、人間か?この間召喚された。」
「そうだ、俺は候という。お前は、ミール?」
急にミールは表情を変えた。
「俺は、人間なんか信じない、下等生物。」
「な、急に」
「ナーレ、レータ、なんでこんなやつと一緒にいる。こんな奴を連れてきた。」
「それは…」
「この人に助けられたの~」
驚いた顔をしてミールは俺を疑った。
「本当だ、エルフの国王とも友好関係の契約も結んだ。俺は魔女に追い詰められたこいつらを契約を結ぶことで救った」
「どうゆうことだ。」
よく耳を澄ませば、ブンブンと羽音が聞こえる。
「町の妖精か?」
「ちがう」
ミールが歯を食いしばって指を刺した。
2人の妖精も目を背ける。
「あれは…」
目の前に浮かんだ光景は、あまりに卑劣なものだった。
飛べないように羽を縛られ、手足と足枷。
「助けて、まま~」
「やだ、行きたくない」
そんな悲鳴だけがこの町に響いている。
他の妖精族は耳を手で塞ぎ、目を反らす。
俺は怒りが込み上げた。だが、俺が飛べない。
箱に入れられた、彼女たちを救えない。
それに、心臓が…
(あの箱を引いてる家臣、2人ともルフ持ちよ。でも)
(何かが違う、お前とは)
(なんというか、私たちと違う生体系。)
(調べることは?)
(あの者たちの血を少し、あなたが舐めれば。ただ)
(命の保証はしないか)
「ここに人間が居たらまずい、俺も命がない」
「隠れないと」
「こっちだ」
そう言って、ミールができるだけ羽音を立てないようにゆっくりと飛んだ。
そうすると、小さな小屋が見えた。
「ここなら。お前も入れる」
「ミール、これ独りで?」
「まあな、半月に一度あの光景が見たくなくてここに逃げ込むんだ。」
「いつ、声がかかってもバレないようにって感じか?」
「まあそんなとこだ、人間」
「人間じゃない、候だ。」
俺は気になっていることを三人に聞いた。
国王は半月に一度魔女の層に三人ずつ送っている契約をしたこと。
歯向かえば、さっきの家臣2人が強制的に国王の下に連れていき、絶対の服従を一生銘じられること。
そして、唯一魔女から帰された妖精族があの二人の家臣だったこと。
男女とはず、子供が連れ去られること。
ここがなんとも憎い。
「これは、思ってたよりも国王、さらにダメダメ族だな。そんなんでよく国王なんてやってるな。」
「それは、もともと王族に生まれた特権だよ。」
「あの王族は私たち妖精と1つ違うものを持ってるの~」
「違う物?」
「あなたも持っているでしょ、エルフ国王からもらった力が」
「これのことか?」
そう言って、俺は霧の力の魂(たま)を取り出した。
「おわっ、それまじっすか」
「口調変ってるぞ。まあ、まじだ」
「「なんせ、召喚されたからねぇ」」
ニヤニヤしながなら言う双子に拳骨をくらわした。
この2人とエルフ国王しか喋っていない。
俺の野望。新しい人生の結末を。
コホンと咳ばらいをし、俺は話し始めた。
「この2人は俺の旅の仲間だ。そしてこの層の魂ももらう」
「それで、この層は救われるんすか。」
「言葉によってはそうなるかもしれねぇな」
そういう俺の言葉に少し悩んだようだったが、心に決めたのか俺の顔を見て
「おれも力を貸します。これ以上妖精族を減らしたくない。」
「じゃあ、国王の下に行くにはどうしたらいい」
その言葉にすぐに答えたのはレータだった。
「そんなの、簡単よ。忍び込めばいいじゃない。」
「それで捕まるの~」
ナーレは怖い。おっとりしてるのに。
俺とミールは顔を合わせて叫んだ。
「「リスクがでかい!!」」
俺は呆れて作戦を伝えた。
「候にしては名案ね!!」
「それいいかも~」
「それなら俺にも手伝える」
「じゃあ、結構は明日だ。題して聞き込み署名活動でとんずら作戦だ!!」
「「「おーーー!!」」」
こうして、妖精族奪還作戦は決行されるのだった。
「魔女様、妖精族に例の人間が入ったようです」
にやりと笑った魔女は指を指した。
「あの子をお呼びなさい。ふふ」
「かしこまりました」
そう言って、やってきたのは毛むくじゃら。
「お呼びですか、魔女様」
「えぇ、可愛い私のわんこちゃん。お腹すいていない?」
「そ、それは…」
わんこと呼ばれた毛むくじゃらは瓶に入った一匹の妖精によだれを垂らした。
中の妖精は怯えて声も出ない。
「わんこちゃん、この子達の村にリードなしで放してあげるわ。やることは分かっているわよね?」
わんこは、俯きながら涙目に
「ワン」
とだけ答えた。
「ふふ、そろそろあの種族いらないもの。十分研究させてもらったし」
そう言って、瓶を壊した。
落とされた衝撃で羽は傷つき、足も。折れて血が出ている。
「ワンコ、今日のご飯よ」
ワンコは小声で、すまん。
それだけ言った。
魔女の部屋には、一滴の血も残らず、高笑いと骨の折れる音だけが響いた。
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