第18話 人と人が出会う確率はいくら?

「これがあなたの言っていた昔の防波堤なんでしょ?」青い浴衣を着た妻は聞いてきた。

 僕らは花火大会を見に行くために、昔の防波堤が残る臨港線沿いの側道を歩いていた。芦屋国際高校を過ぎると、交差点にオープンカフェの座席が並び、昨年に建てられた目新しい市営住宅が続いていた。


「そうやで。ここが昔の海岸線やったとこ」

 僕は黒いハイビスカスのアロハシャツを着ていた。花火大会の人込みの中でもすぐに見つけられるように、お互い普段は着ない服装をしていた。

「でもあなた、天王寺さんに知ったかぶりして。あなたもその昔の海岸線って見たことないんでしょ?」


「知ったかぶりは失礼な。確かに見たことないけど昔学校の授業で聞いたんよ。『芦屋のうつりかわり』みたいな名前の小冊子があって、社会科で習ってんから」

「そういうの地域性でるよね。私の田舎でも源氏と平家の戦いの授業があったよ」

「君の田舎は義経が鵯越に行く途中に通ったところなんよね。裏六甲の」

「裏六甲って言わないで! 私の祖先は『火の鳥』で義経に家を焼かれた人達よきっと」


 僕らは宮川まで出ると、川の側道を南へと歩いて行った。周りにはすでに浴衣姿の女の子達や、前後のシートに子供を二人乗せた自転車が通り過ぎて行った。

「僕のアロハは目立つかもしれへんけど、君の浴衣は微妙やね。こんだけ浴衣の人がおるんやから」

「いいのよ。着たかった言い訳やもん。でもあなたは本当にずるい人ね。毎日同じ服着てるくせに、そんな派手なんも似合うもん」

「まあ男前の宿命やな」僕はへらへらと笑いながら言った。

「この前の結婚式の写真もずるかったよねー。仕事をしてないあなたが、一番仕事できそうな人みたいに写ってたもん」

「すまんのー!」僕は笑いながら言った。


 僕らは宮川沿いの道の南端まで辿り着いた。海岸の堤防沿いには、既にいくつかの屋台が並んでいた。

「ここが僕の知っている昔の海岸線やね。今は堤防の下も遊歩道みたいに整備されてるけど、僕が子供の頃はテトラポットが積まれてたわ。花火もそこの潮見中学校から眺めてたんやで。ほんまに海が遠くなったわ」

 僕らは海を挟んだ人工島へと渡る橋の上を歩いた。

「でもこんな風に人工島みたいにしたら、昔の海岸線も残せたのにね。夙川の方の砂浜は『火垂るの墓』のまま残ってるのにね」

「あそこは昔のまんまやね。回生病院は建て替えてしまったけどね。子供の頃見てびっくりしたわ。映画のまんまの入り口があったもん」

 橋を渡りきると阪神高速湾岸線の下をくぐり、震災復興の県営住宅の横を歩いた。僕らの周りは小さな小学生や、中学生ぐらいの自転車の集団が僕らを追い抜いていった。


「天王寺さんもこの子らぐらいなんよね?」妻は言った。

「そうやね。この子らぐらいや」

「こんな小さな子たちが、ラインとかでひどいこと言ったりもするんやね。信じられないね本当に……」

「多分まだひどいこととか悪いこととか、よく分かってない子たちもおるんちゃう? これから気付いて後悔する子もおるやろうし、気付かないまま大人になる子供もおるやろう。それが教育の役目なんやろうな」

「あなたもちょっとだけいいこと言ったかもしれへんけど、天王寺さんの家は犬を飼い始めて正解やったね」

「正解とは?」僕は尋ねた。

「だってミーちゃんがいたから、インスタも犬の人になって『いぬすたぐらむ』で充実するようになったんでしょ? ラインも何となく続けていたけど、嘘の散歩がきっかけで結局見たくなかったものを見なくて良くしてくれた。つらいこともあったけど、ミーちゃんと一緒にいたから天王寺さんは変われたんじゃないかな?」

「そうかもしれへんな。ミーちゃんがおらんかったら君の言う『何となく』がずっと続いていたかもしれへんね。多分僕とも出会ってないやろうし」

「あなたとの出会いは、あってもなくても一緒」妻は笑って言った。


 花火大会の会場となっている総合公園は人込みの雑踏で溢れていた。数多く並ぶ屋台にはそれぞれに大きな行列ができていて、から揚げ一つを買うのにどのぐらい待たされるのだろうかと思った。ケバブ屋と牛串屋の肉を焼く煙が、強い匂いを公園に広げていた。

「最近僕らは人の多いところばかり行っとるな?」

「花火も競馬場も安いエンターテインメントやもんね。花火は子供たちだけでも見に行けるし」


 確かに今日ばかしと浴衣を着た女子高生や女子中学生の集団が、誰に見せつけようとしているのか慣れない化粧をした楽しそうな笑顔を周囲に振り撒いていた。有料観覧エリアの入り口前には無料でヘア・アップを体験できるコーナーが並んでいた。


「これ私もやってもらおかな?」妻は言った。

「こういうのは若い子に譲ってあげたらええやん」

「何よ。私はもう若くないって言いたいの?」

「そうやないけど。君は美容院とかで経験があるやろうけど、子供たちは生まれて初めてやってもらう子とかもおるかもしれへんやん? だから譲ってあげたらって」

「あなたの言うとおりね……。みんな嬉しそうな顔。私は結婚式もしたもんね」鏡の前で笑顔を見せる女の子達の姿を見て妻は微笑んだ。

 僕らはチケットを買い、有料の砂浜観覧エリアへと歩いて行った。夕闇のビーチは午前までに降っていた雨の影響かまだ幾分湿っており、そのおかげか公園内の人波の熱気よりは涼しく感じられた。


「これ砂浜に座ったら濡れるね?」

「ご安心あれ」そう言って僕はカバンからスーパーのビニール袋を二枚取り出した。

「こちらの上にお座りください」

「意外にそういうとこ気が付くよね」

 僕がよく買い物に行くスーパーはレジ袋持参で二円引になるから常備していただけだが、もちろんそのことは黙っていた。


「天王寺さんはどこで見てるのかな?」妻が尋ねてきた。

「バーベキューもできる特別観覧エリアやから、後ろの椅子と机も用意されているゾーンのどこかにおるんちゃうかなあ」僕は公園の防波堤の辺りを指差して言った。

「天王寺さんのお母さんも家族サービス大変やね。バーベキュー付きの特別席やったら、よっぽどチケットも高いんじゃないかな?」

「そうやろうな。でもまあ天王寺さんにも色々あった訳やし、お母さんもフォローして気を使ったんかもよ?」

 徐々に空も暗くなってきて、花火の時間が刻一刻と近づいてきた。周りの若い子供たちも各々の陣地を等間隔に座っていった。

「あそこの海の向こうの光は全部舟なの…?」妻が尋ねてきた。

「あれらはそうやね。ルミナスとかコンチェルトとか神戸の遊覧船が花火クルージングで大集結してるはずや。今頃船上パーティー真っ盛りやろうね。個人のクルーザーとかも結構出てると思うよ」

「ほんとにうちの田舎とは全然違うね。こんなにも海上生活している人たちがおるなんて、芦屋に来るまでは全然知らなかった」

「君の田舎も僕は好きやで。豊助饅頭は最高や」

「さっきは裏六甲ってバカにしてたくせして……」不貞腐れた様子で妻は言った。


 音楽イベントの音がやみ、司会の女性が花火の始まりを伝えていた。公園の照明も必要最低限まで落とされていた。

「そろそろやね」妻は楽しそうに言った。

 大音量の音楽と共に花火が打ち上がった。砂浜からは花火との距離も近く、光の輝きとほぼ同時に花火の爆音が響いてきた。花火は流れる音楽と連動されている様子で、音楽の盛り上がりと同じタイミングで火花が夜空に散り渡った。海上ではロックバンドのコンサートの様に、花火と曲に合わせて炎の火柱が上がっていた。花火は曲が終わると一旦止まり、次のスポンサーの紹介が終わると次の曲と共にまた上がり始めた。


「0123は今年もやるんかな?」曲と曲の合間に妻は尋ねてきた。

「今年もやるやろ。芦屋の花火の名物みたいなものやからな」

 僕らがそう話していたその時、引越し会社のCMソングが流れ始めた。

「始まったで0123」

 CMソングと共に引越し会社のテーマカラーであろう青い花火が打ち上がった。そしてCMソングの「0123」というタイミングに四つの花火が連続で打ち上がった。それは本来は「0123」という数字そのものの形をしているはずの花火だったが、僕らの正面からはうまくその形には見えなかった。

「0123失敗やね」妻は言った。

「もう一回チャンスがあるからな」

 引越し会社のCMソングは再び続き、また「0123」のタイミングで四つの花火が打ち上がったが、かろうじて初めの「0」と最後の「3」が見て取れるほどにしか見えなかった。

「二回目もあかんかったね……」妻は残念そうにしていた。

「そうやな。今年はちょっとうまく見えへんかったね」僕も苦笑いをしていた。


 その後の花火はジャズ風にアレンジされたジョン・レノンの「イマジン」が流れ、その後は「ウィーアーザワールド」と歌が続いていた。

「あの0123が完璧に成功する確率ってどのくらいなの?」

「簡単な計算やったら出せるけど、聞きますか?」僕は言った。

「それでええから教えて」

「ああいう面の花火は、上下、左右、前後ろの立方体みたいな六面のどちらかを向くことになるから、単純に向きだけを考えたら六分の一やん?」僕は各方面に手のひらを動かしながら言った。

「そうやろうね」

「六分の一を四回やから、六の四乗して千二百九十六分の一になるね」

「千分の一以上って絶対無理やん。あんま期待しても意味ないのかな?」

「いや、これはあくまで簡単な計算。ゼロとか一とかは裏表も一緒の形に見えるやろうし、脳が補完するからそこまでひどくはならないはず」

「どういうこと?」

「初めて見た人で花火の形が『0123』になってることを知らない人やったら『なんやろうあの花火は』ぐらいにしかならへんかもしれへんけど、知ってたらその形を探そうとするやん」

「確かにうちらも期待して見たもんね」

「だから知ってる人は全部が完璧やなくても、ちょっと斜めやったり、ちょっと裏返ったりぐらいやったら『見えた』って思うはず。せやから案外二回上げてくれたら十分なんかもね。今年はあまりに運が悪すぎただけやろう」

「そっか。ほなまた来年に期待やね」


 花火大会もエンディングに近づいてきた。最後にかかった音楽はディズニーの「アラジン」のテーマ曲だった。

「実写映画公開中やから乗っけてきたね」僕は言った。

 アラジンのテーマと共に大量の花火が打ち上げられ、フィナーレは空に垂直に昇る光の列の帯と共に、空を埋め尽くすゴールドの光の海が広がった。観客たちは皆大きな歓声を上げ、そのあとに拍手が全体に鳴り響いていた。ぽつぽつと観客たちも立ち上がり始め、空には火花の余韻が静かに散っていた。

「今年もよかったね。ほな帰ろか?」僕は立ち上がり妻に言った。

「ちょっと待って。ずっと座ってて腰が痛いねん。引っ張り上げてくれへん」妻は手を上げて言った。

「ほんまにおばさんになってきたな」そう言って僕は妻の手を引き上げた。

「砂浜に体育座りなんて普段しないやん。それに私は浴衣やから動きにくいの」


 ようやく立ち上がった妻と後ろを振り向くと、熱烈に抱き合う男女のカップルが一組、我々の目の前で自分たちの世界に入り込んでいた。浴衣を着た女性は男性の胸に顔をうずめ、男性はその女性の頭に手を乗せて撫でていた。

「いや、マジかよ!」つい僕は呟いてしまった。

「はよ行きましょ」妻は僕をせかしたてた。

 僕らは足元のビニール袋を拾い上げ、砂浜の上を出口の方へ向かって行った。会場の出口付近は混雑していたため、公園から外に出るのにも時間がかかった。

「マジかよ。公衆の面前でようあんな世界に入り込めるな?」

「すごかったね。若いっていいよね」

「あれは若さからなんかな。周りが見えてないだけにも思えたけど……」

「いいの。周りが見えなくなるのが若さなのよ」


 僕らは公園を出て家路に戻る群衆と共に、南芦屋浜を歩いていた。目の前を歩く浴衣の少女は、屋台で買ったのだろう犬の形をしたバルーンを引いていた。犬のバルーンの前足と後ろ脚部分は車輪になっていて、引くと犬の散歩をしているようだった。

「帰ったらルーシーの散歩行こうかな?」バルーンの犬を眺めながら僕は言った。

「絶対行きたがるであの子」

「花火の間はルーシーは大丈夫やったんかな? 家そこそこ遠いけど音は響いてたんちゃうかな」

「でもあの子、台風の時でも雷の時でも全然平気にしてるやん。大丈夫やって」

「昔ラッキーちゃん飼ってたやんか」僕は思い出していった。

「知ってるわよ。何回も聞いてるやん」

「ラッキーちゃんも結構平気やってんけどさ、震災の時あったやんか? 君んとこはどないやったん?」

「びっくりして目が覚めたわよ。近くでトラックが交通事故起こしたんかと思ったもん」

「うちは多分もっと酷かったと思う。家の木材がばきばき音を立てて軋んで、ほんまに子供ながら死ぬかと思ったわ。そんで揺れが収まって親兄弟とラッキーちゃん見に行ったら、めっちゃ震えててん。もう本当にブルブルって。あんなんは震災の時だけやったな」

「犬に地震が分かるわけないよね」


 宮川沿いの道にまで戻ると僕らは群衆を避けて小さな橋を渡り、行きとは反対側の道を戻って行った。臨港線まで辿り着くころには、周りの人々もまばらになっていた。

「今年の花火はどないやった?」妻が聞いてきた。

「まあ良かったよ。『0123』が残念やったけど。天王寺さんも見てたやろうな」

「また天王寺さんの話をしてる……」

「いや深い意味はないって。ただ去年はまだ天王寺さんとは出会ってなかったなって。ミーちゃんもまだ生まれてなかったやろうし」

「あーこの人はもしかしたらまじでロリコン変態に目覚めようとしてるんやないやろうか? 『あの時、彼女はきっと、僕と同じ空を見ていたんだ!』って、恋に恋する中学生やん。あなたはもう立派なおっさんなんよ」恋に恋する中学生を演じながら妻が言った。

「分かってるって。もう言いません」


 僕らは少し黙って歩いた。打出の住宅街に入ると巨大な門構えの日本家屋が並び、巨大な蔵や勝手口のある入り口などを眺めると、確かにこの辺りが昔海岸線近くの牧歌的な田舎町だったことを感じられた。

「人と人が出会う確率ってどのぐらいなん?」妻が尋ねてきた。

「どういうこと?」

「だから人と人が出会う運命の確率。よくテレビとかでも『人との出会いは宝くじに当たるよりも奇跡的』とかいうやん?」

「あれなあ。あれは計算してはいけない計算やね……」僕は何となく考えながら言った。

「何それ。あなたにはロマンもへったくれもないんですか?」

「いや違うね。僕は十分なロマンチストです。ほななんで計算してはいけないか聞きたいですか?」

「聞かせて下さい」

「まずスタートラインの設定が難しいです。僕と君の出会いの確立を考えるとしたら、僕らが生まれてからがスタートなのか。もっと辿れば僕らの親同士が出会う確率から考えるのか? もっともっと辿れば、何世代でもいくらでも辿っていける。そう考えると、出会う出会わない云々の前に、僕らの存在そのものがまず奇跡の上に成り立ってることになります」

「そうかー。そう言われたらそうやね」


「次に物理的な出会いと精神的な出会いの違いも考えないと」

「それはどういうことなの?」妻は言った。

「例えば新快速の座席に座っていて、隣に誰かが座ったとします。ちょっとの時間かもしれないけど二人は隣り合って座りました。物理的には二人は出会ったのかもしれないけど、でもこれは君の考える『出会い』ではないやろ?」

「そうやね。それはただの偶然やね」

「犬の散歩してても、お互いによく見る顔やけど話しかけてこない飼い主もおるし、まあ犬同士で挨拶する程度の人もおるし、天王寺さんとも天王寺さんから話しかけてくれなかったらそんな程度やったと思うよ」

「ビションフリーゼ同士やったから起きた出会いやね?」

「まあそういうこと。つまるところ人は、出会いたいと思った人に出会ってるねん。そして最後に、確率とはこれから起こることを計算するものであって、既に起こったことは計算できない」


「もう少し簡単に言ってみて?」

「例えばサイコロで四の目がでました。では四の目が出たサイコロが、六の目になる確率はいくつでしょう?」

「そもそも四の目が出てるんでしょう。風が吹くとかイカサマ・サイコロとか床を傾けるとかは、なしよね?」

「なしです」僕は笑って言った。

「それじゃあ普通に無理やね。六はなし。ゼロパー」

「そういうこと。確率はこれから起こることを計算するもの。すでに起こった事柄はそもそも計算してはいけないねん」

「でもそれはどんな意味なの?」

「簡単やん。僕はもう君を見つけとる」僕は言った。

「何それ、嫌やんそんなんさらっと簡単に言っちゃって! もうほんまにあなたはずるいわ!」妻は僕の背中を何度も叩いた。

「私の事を探してくれたの?」妻はにやにやしながら聞いてきた。

「それなりに頑張って探したよ。嘘を言わないでいい君をね」

「もうそんなんやったら全部許してあげる。天王寺さんと同じ空を見ててもええよ。ロリコン変態になっても構わへんから」

「それは絶対に許したらあかんやろ! それにならへんし!」僕は大声で言った。

「嘘よ嘘。言ってる傍で私嘘ついとる」妻は笑った。


 僕らは打出の住宅街から阪神打出駅へと続く道に出た。打出駅までの道はまだまだ花火帰りの人たちが歩いていた。僕がよく行くスーパーは閉店の作業に入っていたが、向かいのコンビニには花火帰りの客が多く入っていた。

「天王寺さんもこれから探すんやろうな……」僕は言った。

「愛する人を?」妻は嬉しそうに聞いてきた。

「それもあるけど、嘘を言わないでいい自分でいられる誰かかな。僕にとっての君や、僕の数少ない友達とかみたいな」

「それやったら天王寺さんは見つけとるよ」

「なんで分かるん?」僕は妻に聞いた。

「天王寺さんはあなたを見つけとるやん。嘘を言わないでいい犬友達。嘘で先生とか呼ばれてるのにね」妻は微笑んで言った。

「君にそう言ってもらえると結構嬉しいです」僕は言った。

「帰ったらまたルーちゃんの散歩行ってき。あなたと天王寺さんの出会いはルーちゃんのおかげやねんから。ルーちゃんに感謝しないといかんよ?」

「ほんまやな。ルーシーに感謝や……」

 僕らはルーシーの待つ家へと歩いて行った。打出駅までの道には家路を目指す浴衣の数々の色であふれていた。

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