第4話 我が美白の神よ

 車に乗り込んできた妻に「確かに日焼け対策した女の子おったわ」と言うと「でしょー。我が美白の神よ」と妻は返してきた。

「まあお母さんに帽子を被れって渡されただけみたいやったけど」

「夏にはしまいに、日傘や日焼け止めクリームなんかも渡されるでその子。我が美白の神よ。われらに様々な紫外線対策グッズを与えたもうた事に感謝します」


「はいはい。それでな、その子ビションの子犬、連れててん」

「そうなんやー。男の子、女の子どっちやった? もし女の子やったらルーちゃんの子供できるかもしれへんで」

 ルーシーは去勢手術をしていないので可能性はあるかもしれないが、そんなに簡単に言うような話ではないと思ったが僕は黙っていた。

「残念ながらオスです。聞かへんかったけど、あれが股に見えてました」

「それは残念やねー」

 残念と言いながらも妻はあまり残念そうな様子には見えなかった。本気で言っていたわけではないのだろう。


「せやけどその子、いつまで持つかね……」昔のことを考えながら僕は言った。

「持つってどういうこと?」

「いや僕もさ、小学生の時に犬を飼ってたやん? ラッキーちゃん」

「言うてたね。確か大学生の時に亡くなった犬よね」

「ラッキーちゃんの事は好きやったよ。でも犬の散歩って子供の頃は面白くなかった記憶しかないんよね。どちらかというと面倒くさかった。あの頃は他に楽しいこといっぱいあったからやろうなあ。友達と遊んだりとか、ファミコンしたりとか。まあ勉強もあったし」

「今はあなた、犬の散歩ぐらいしかすることないもんね」妻は笑って言ったが、僕は話を続けた。


「まあそれでその子やけど、子犬のうちは良くても徐々に犬の散歩に飽きてくるんちゃうかなって話。面倒くさいって。その子スマホ持ってたで。ルーシーの写真撮ってインスタにアップするって。子供がスマホってもう普通なんかな?」

「その子何年生やったん?」

「聞いてないけど見た感じ多分、小五か小六ぐらいと思う」

「それやったら普通ちゃう。私の友達も、中一の子にもう持たせてるって聞いた」

「そんなもんか。でも、飽きてきたら犬がかわいそうやね」

「その時は、あなた代わりに散歩行ってあげたら? どうせ犬の散歩ぐらいしかすることないんやから!」妻は笑いながら言った。

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