第2話 熱い心を供にして(「鍋 鉄板バル 心」さんの粉骨砕心)

粉物が食べたい。


不要不急の外出を控えるように指示を受け、早数日。

酷く強烈に粉物を食べたくなった。

どのような苦境に在ろうとも夜の街とともにあらんとする思いが、昨晩の文章となったのであるが、その熱い思いは鉄板をも求めたらしい。

そうなると、抑えていなかった鉄板焼きの店を探さざるを得ない。

その思いに応える心が下通にはあった。


「鍋 鉄板バル 心」はツインビルの1階に在る店であり、扉を解放して今日も営業していた。

その心意気に一礼し、己が欲望に従って注文をする。

軒先の豚のベンチが楽し気に私を迎えてくれた。


帰宅し、いつものウィスキーソーダでジョッキを満たす。

駆けつけ一杯を胡椒の効いたポテトサラダでやる。

ポテトサラダにソースをかけるのが飲みの際の私の流儀なのであるが、この後を考え、今宵は控える。

そのため、ベーコンの旨味と胡瓜の触感の輪舞を存分に楽しむことができた。

とん平焼きもまた追いかけて来、私にジョッキの半分を空にさせた。


ここで、チーズ豚玉という千両役者が登場した。

箸で丁寧に切り分け、口一杯になるように運ぶ。

周りにソースが付いた。それがまた愉しい。

そして、穀類と野菜の甘み、肉類の旨味、ソースの塩気が合唱を成して心を満たす。

この甘美な誘いに私は乗って箸を驀進させる。


粉物の醍醐味である一心不乱の喫食が、私の心を攻め立てる。

ウィスキーソーダはその間隙を突いて臓腑を満たす。


やがて、一切れとなったお好み焼きは、寂しげにそこにあった。

それを摘まみ、ジョッキを干す。


名残のソースを掬って舐る。

その一滴まで、愚直に夜の街の在り方を示していた。


【店舗情報】

「鍋 鉄板バル 心」

〒860-0807 熊本県熊本市中央区下通1 8-9 ツインビル1F

電話番号:096-325-3378

営業時間:月~日、祝日、祝前日 19:00~翌6:00

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