第50話 孤独(8)
「バーンさん、大丈夫でしょうか?」
「…………」
「あの場所に、ひとり残してきてしまって」
「…………」
バーンの心配をする鳳龍を横目で見ながら臣人は何も言えなかった。
臣人には彼の気持ちが手に取るようにわかる。
鳳龍にはわからなくても
「
(特に『銀の舟』…『混沌の杖』の名が出たのならなおさらや。
覚悟、決めるために残った…。
それと動揺した不安定な気持ちのまま誰かの隣にいれば、魅了眼がその人を傷つけてしまう可能性があることも知っとる。
だいぶ自分の
…………
ようやく、自分と向き合って
こんな事になるなんて…な。
そやけど『時』は待ってくれへん。
動き出した『時』は。
わいらはやらなぁあかん。
今度こそ、負けられへん。
せやろ?バーン。
答えはわいらの中にある。
そんな時わいがいても、どうにもならんさかい。
きっと
きっと想い出の中の彼女と言葉を交わしている。
そうして、今度こそ自らの意志で立ち向かえるとわいは信じる。
信じて待つ以外にわいには……)
ずっと黙り込んでいた臣人がようやく口を開いた。
作り笑いをして鳳龍を見た。
「あいつも、もうそんなにヤワやない。心配すんな」
「…はい」
兄のように慕っている臣人がそういうのなら、自分も信じようと思った。
他人の助力では解決できないことがある。
自分の力で解決しないと意味のないことがある。
それを重々承知していた。
それは追及しても意味のないことなのだ。
ふっ……と息を吐き出して、肩の力を抜いた。
「じゃ、行きます」
「応。」
足元に置いてあったナップザックを手に持つとドアノブに手を掛けた。
「臣人さん」
「!?」
ドアを半分開け、身体をちょっと外に出しながら鳳龍は振り返った。
「ぼくで役に立つことがあればいつでも遠慮なく呼んでください。って言ってもケンカ専門ですけど」
子どもっぽい笑みで臣人を見ていた。
その笑顔が彼をほんの少し癒してくれた。
「ああ。そんときは頼む」
勢いよくドアを閉めると裾を翻しながら軽やかに走りだした。
やがて、その後ろ姿が見えなくなると臣人も車外に出た。
湿った風が汗ばんだ背中を吹き抜けていった。
まだ昼間の熱気が残っている風だった。
右手をドアに掛け、左手は車のルーフに置いたまま頭上に広がる夜空を見上げた。
「この空の…どこに星があるのかさえ…今はわからへんな」
独り言のようにそう呟いた。
(バーン。お前もこの空を見上げてるんやろか?
そこに彼女の姿はあったか?
彼女はなんて言うとった?
わいは、
わいは償えるんやろか?今度こそ……)
目を閉じると暗闇に独りたたずむバーンの姿が見えた気がした。
=FIN= すべてはルーンの導きのままに…
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