第49話 孤独(7)
鳳龍が悪いわけではない。
彼が責任を感じることではない。
彼はよくやってくれたと思っていた。
「別にお前がどうこうってわけやない。気ぃにすんな」
努めて明るい声で臣人が言った。
鳳龍がいなければ、今日、事態は収拾していなかった。
彼の圧倒的なまでの追跡力と戦闘力、そして冷静な状況判断がなければ、事態はおそらく最悪の結果を招いたはずだ。
いくら能力者のバーンやアニスであっても、現実世界の武力に対抗するのは難しい。
臣人も鳳龍と同じ武術を使うものとして、そのあたりは痛いほど理解できた。
それとは別に臣人は自分自身のことを責めていた。
「覚悟はしてたんや。いずれこの日が来るつぅことはな。わいもバーンも」
すぐに暗い声に戻った。
ラシスが逝ったあの日から数えて8年。
バーンをあの場所に連れ出し、ラシスの命を奪った『銀の舟』が壊滅して8年。
あのときFBIの事情聴取からも司祭の名は教えられても、教主の名は知ることができなかった。
組織は壊滅しても教主を見つけなければいずれ組織は再生する。
それが現実として今日突きつけられた。
『混沌の杖』と名を変えて。
「だから、お前はお前でようやった思ぅとる。いてくれなんだら、ひょっとしたら本条院は死んでたかもしれへん」
臣人は鳳龍の頭を大きな手でポンポンと撫でた。
「
厳しい表情で臣人は言った。
臣人の言葉の重さと決心の固さを肌で感じ取った。
いつも底抜けに明るい彼からは考えられない雰囲気だ。
こんな臣人を円照寺でもどこでも見たことがなかった。
だからこそ、本当のことを知りたくなった。
興味本位からではない。
もし、力になれることがあれば、手を貸したかった。
そんな思いが彼を突き動かした。
「一体何が起こっているんですか?」
臣人に何を言われても具体的なことは何もなく、知りたい欲求を満たしてはくれなかった。
はぐらかされるのを承知の上で聞いてみた。
自分をあの廃屋の外に出そうとした時の臣人とすべてが終わってから会った臣人では全く様子が違っていた。
それはバーンも同じだった。
彼ら二人をここまで追いつめるような出来事が何かあったのだ。
「わいもそこを知りたい。が、その答えはいずれわかる」
これから起こることでわかっていることといえば、再びバーンが狙われていること。
『混沌の杖』という組織に。
RWという名も初めて聞いた。
それが誰なのかまだわからない。
イェツラーと名乗った男はバーンの真の姿を見ると言った。
彼が『切り札』だと。
何のための『切り札』なのかもわからない。
それに右眼が関係するのかもしれない。
今は憶測でしかないのだ。
「____近いうちにな。おそらくは8年前と同じようなことや」
そう言って臣人はギリッと唇を噛みしめた。
『
必要ならば死という形で排除する。
前身の『銀の舟』とはそういう組織だった。
(8年前?)
臣人の言葉を不思議に思った。
鳳龍が初めてバーンに会ったのが4年前だ。
それ以前、彼らがどこにいて何をしていたのか全く聞いたことがなかった。
自分の知らない8年前に起こったという出来事。
まだ自分は物心つく前。
時の流れを感じられずにはいられなかった。
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