第13話 捜索(2)
バーンはまっすぐ前を向いたまま名を呼んだ。
次の手を打たねばならない。
「…アニス」
「みゃあ!」
元気に返事をして、すり寄った。
「頼む…」
「にゃ!」
黒猫は任せてくださいというように胸を張った。
バーンは向きを変えると綾那を呼び寄せた。
「劔地、」
「はい?」
「本条院からもらった物とか…彼女が直接触ったり、持っていた物はないか?」
「え、え~とですね」
綾那はポケットを探り何かを取り出した。
「今日彼女からもらった手紙っていうか、メモなんですけど。直接、手渡されたので、どうですか?」
バーンが手に取ると、その紙には確かに美咲の気が残っていた。
「アニス、この気を辿って…彼女の居所を探せ。まず、捨てられている携帯の所へ…行くんだ」
「にゃっ」
「そして、その携帯に残っている…一番新しい気を探れ。それが…犯人の残した手がかりだ。それは犯人によって捨てられたんだろうからな」
「にゃっ!」
綾那はバーンの言うことを聞いて目をパチクリさせた。
この猫は彼の言ってることを逐一理解しているように、うなずいている。
一体、何をさせようというのか。
これから起こることは彼らの不思議な力が関わっていることなのか?
「あ、あの、バーン先生?一体何が始まるんですか?」
「詳しい説明は…あとだ。…時間がない」
バーンは綾那の質問を冷たく退けた。
綾那は美咲のことを心配している。
それはわかっていた。
だからこその奥の手なのだから。
「…………」
彼にこう言われてしまっては何も言うことはできなかった。
バツの悪そうな顔で榊のいる方へ後退った。
榊も後ろからそのやりとりを見ていて、フォローに入った。
彼女の肩を抱き、何やら話しかけていた。
それを横目で見ながら、気持ちを切り替えようとした。
「臣人……」
「ああ。」
臣人は自分の携帯を開くとある番号に発信し始めた。
美咲の携帯の番号だ。
コール音が聞こえ始めるとその携帯を黒猫の方に向けた。
この奇妙な行動を少し離れた所から綾那も榊も見守っていた。
「ええで」
「…………」
(行けっ!)
バーンはアニスに視線を送った。
アニスは彼の肩からその携帯の通話口に向け勢いよくジャンプした。
ぶつかると思われたその瞬間。
「あ!?」
綾那も榊も目を疑った。
「そんなっ!」
猫の姿がその場からかき消えた。
その子猫はただの猫ではない。
バーンの使い魔。
サキュバスだ。
人間の精気を糧とする魔物。
人によって異なる気を見分けることにかけてはバーンや臣人よりも優れた資質を持っていた。
その力を使って、まず美咲の居場所の特定をしようとしたのだ。
「よぉ~し!行ったでぇ。で、どないする?」
「
「まずは捨てられた携帯の場所へやな?」
「ああ。」
「わいの携帯は?」
「そのままに…してくれ。
「はいな。しかしなぁ、ハイテクにゃ結界も通用せんとは」
ちょっと呆れたように臣人が言った。
「仕方ないさ…。時には…物理法則の方が勝ることだってある」
「にしても、悲しくなるわな~」
「臣人。」
彼の話を途中で遮った。
すまないという顔ですぐさま運転席に向かった。
「行こう……」
バーンは臣人から携帯を受け取ると車に乗り込んだ。
それを見て、慌てて綾那も榊も後部座席に乗り込んだ。
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