第28話 高冬真友と生徒会役員たち①
〜高冬真友〜
「おいおい真!放課後から生徒会役員だってな!?」
4月30日の15時50分。
帰り学活の開始を待っている時に、前の席に座る研士郎が、聞きたてほやほやの情報の真偽を本人である俺に確かめてくる。
「ああそうだぜ!ちょっと色々あって入れてもらうことになったんだ!」
研士郎たちが俺の生徒会参加を知ったのは、さっきの6時間目の授業中だ。
どうやら、満上会長が特権を使用して俺を生徒会に入れたのは、先生たちの間で話題になっていたらしい。
それでさっきの授業中に、先生が直接俺に聞いてきたのだ。
別に隠していることでもなかったので正直に答えたところ、一足先にクラスメイトには伝わったってことだ。
「いやどんなことが起こったら入れてもらえることになるんだ!簡潔に話せよ!」
「そうだよ!生徒会に入れば、何かしら優待してくれるって聞いてるんだけど!ズルくない!?アンタだけでしょ?1年生」
『生徒会役員は所々で優待してくれる』そんな噂を聞きつけた金山ちゃんも、俺に事の経緯を聞いてくる。
「簡潔に、かぁ。そうだな。朝によく会長と会う機会があって、話してるうちに気に入られて?誘ってもらった」
「なるほどな。簡潔だが、1番大事なところがわらん!」
「え!?気に入られたってどう言う事!?LOVEの匂いがするんですけど!」
「君、本当に会長に手を出したの?入学式の時に『会長可愛い!』とか言っていたけど……」
俺たちの話に久留美も参加し、三者三様の反応を示す。
頭に?マークを浮かべる研士郎。
完全に恋愛スイッチが入ってしまった金山ちゃん。
そして、あり得ない誤解を生むような発言をしやがった久留美。
「おい久留美、それはダメだろ。その言い方はダメだろ。なぁみんな、よく聞いてくれ。確かに、満上会長を『可愛い』と言ったのは本当だ。てか実際マジで可愛いだろ?でも手を出したなんて言いがかりがすぎるんだぜ?なんてったって、会長の方から俺に声をかけてくれたんだからな」
とりあえず、解かなければいけない誤解は解かないと。
そう思い、弁解をするが……。
「お前早口すぎねぇか?半分聞こえなかったわ」
「えっ!まさかの!会長の方からなの!?一目見た時から運命感じました的な!?」
「そんなペラペラとよく言葉が出てくるね。実に怪しい」
またも、三者三様の反応を示す。
「おいおいちょっと待て!そんな色んな反応されたら処理が追いつかない……
「うるさいですわよ高冬真友!貴方、学級委員でしょう!?」
俺の声がうるさかったせいだろう、俺と同じ学級委員である姫乃真輝ちゃんに怒られてしまった。
「なんで怒ってるの?今は自由時間じゃん。うるさくしても問題ないでしょ」
「本当だよ」
やばい。
俺のせいで、一部のクラスメイトのヘイトが真輝ちゃんに向かってしまっている。
どうする!?
ん?あれは……!!
ナイスタイミングだぜ!
「貴女たち何を言っているの?学級委員はクラスの模範となる……
「ごめんね真輝ちゃん!学級委員としての自覚が足りなかったわ!いやぁでも、よく見てるねぇ〜。先生が来てるから、わざわざ注意してくれるなんて!これで俺は先生からの印象が下がらなくて済む!ありがとう!」
「席に座ってない人は、座ってください。帰り学活を始めますよ」
俺がしゃべり終わると同時に、担任の富取先生が教室へと入ってくる。
「うわ本当だ、先生来た!」
「本当だ!ていうか高冬!あんた元々先生からの印象低そう笑」
「うるせぇぞ!俺の印象とか、ぜってぇ虹だろ!7つの才能が光る男!」
「はいはい。せっかく注意してもらったのに、無下にするの?」
「ごめんなさい」
どうやら、さっき真輝ちゃんに不満を持っていた人たちも納得してくれたみたいだ。
先生が来たのは偶然だ。
真輝ちゃんは未だ納得がいっていないようだが、先生が来てしまった以上この話を続けられないだろう。
とりあえず、事なきを得られて良かったぜ。
「では、帰り学活を始めます。連絡する事は……」
ーーーーー
「よし。ここか」
まるで、最難関ダンジョンの入り口に立っているかのような面持ちである俺がいるのは、生徒会室の前だ。
今日はバイトが無いので、生徒会メンバーや仕事内容の説明を受けに来た。
「どんな人がいるんだろうな。やべぇ楽しみだ!緊張するけど、開けるぞ!」
ノックは3回以上だよな?
よし、行くぞ!
「あん?おいガキ。ここはお前みたいなチビガキが来ていい場所じゃねぇんだよ。さっさと保護者の元へ帰って牛乳飲め。じゃあな」
そう言って、生徒会室へと消えていく女子生徒が1人……。
「え?」
ん?
なんだ?今の口が悪い女は!
あまりにも口が悪すぎて『女』呼ばわりしちまったよ!
え、誰!?
生徒会室に入ったから役員か!?
「マジかよ……。最難関ダンジョンが、攻略不可のダンジョンに上方修正された気分だぜ……」
初対面の人間によくあそこまで毒が吐けるな、あの人。
少し生徒会室に入りづらくなったわ。
「ん?でも、待てよ?」
あの人は生徒会役員だよな?
思い出してみれば、腕に生徒会役員の証をつけていた気がする。
ということはつまり!
あの毒女と満上会長は同じ生徒会メンバー。
一体全体、会長はどんな風に彼女と接しているんだろうか!?
一度気になり出したら止まらない!
この勢い度扉を開けるぞ!
「失礼します!」
しっかりノックを3回してから、恐れずに扉を開けた。
そこには……。
「おいおいさっきのチビガキじゃねーか。せっかく私が良いアドバイスと共に家に帰れと注意してやったのに!もうダメだな。お前には背が伸びない呪言を唱えてやる。ドーンーアープー……
「ちょい待ちあやめっち!その子生徒だから!天くん、眼鏡掛けてあげて!」
「了解です、舞弥会長!トゥーヤ!」
「フンッ。遅ぇよ天皇寺!まるでゾウガメだな!」
「やあやあ高冬くん!よく来たね!ようこそ、楽青学園生徒会へ!」
そこには、恐らく何度も繰り広げられたことがあるだろう、独自の光景が広がっていた。
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