第14話 高島眞友は変わりたい①




〜高島眞友〜


4月9日



「「来たぜ東京浅草!!!」」


叫ぶ2人のたかとうさんに周りの視線が集まります。


「おいおい。はしゃぐのは構わんが周りを見ようぜ」


染谷さんがはしゃぐ2人を宥めます。


「すまんすまん!ただやっぱ平日でも賑やかだな!浅草は!」


そうです。

わたしたちは今、校外学習の東京散策で浅草に来ています。

東京23区から行きたいところを選び、その場所から得られた文化や歴史をレポートに書き、提出する。

それと、新しくクラスメイトになった人達との親睦を深める。

それが今回の校外学習の目的だそうです。


「わたしも、頑張らなきゃ」


わたしは、誰にも聞こえない声で自分を奮い立たせます。

そうなんです。

わたしには頑張らなきゃいけない事があります。

それが何かと言いますと……少し、自分語りをさせて下さい。


ーーーーー


わたし……高島眞友は、昔から引っ込み思案で、声も小さく、人付き合いも常に受け身だったので、周りに馴染めず孤立していました。

幸いだったのは、いじめの対象にならなかった事ですね。


わたしがよく読んでいるラブコメの漫画では、引っ込み思案で孤立しているヒロインが当然、主人公に話しかけられて、そこから青春が、物語が始まる作品もありました。

同じく引っ込み思案だったわたしは、少しだけ、ほんの少しだけ、そんな漫画のような展開が自分にも起こることを期待していました。

しかし、そんなことは起こらず、ずっと、孤立していました。


ですが、そんなわたしにも1度だけ「友達」と呼べる人が出来ました。


それは中学2年生の5月、いつも通り1人で席に座っていたわたしに声を掛けてくれた人がいました。

その人とは好きなドラマが同じだったのがきっかけになり、すぐに仲良くなる事ができました。

その人はどう感じていたか分かりませんが、少なくともわたしは、仲良くなれてたと思います。


しかし、初めて会話してから3ヶ月が経った8月のとある日。

わたしは彼女を、初めて自分の家に招きました。

そして、わたしの部屋に入った彼女は悲しそうな顔で、こう言ったのです。


「はは。眞友、アニメ好き、だったんだ。そっか。ははは……。ごめん。私には、もう関わらないで。ごめん!」


そう言って、彼女はすぐさま部屋を出て行き、帰ってしまいました。

わたしはいきなり起きた出来事に頭が真っ白になってしまいましたが、彼女がアニメ嫌いな事だけは分かりました。

アニメが嫌いな人が居るのは知っています。

ですが、アニメが好きな人と関わりたくないくらい嫌いな人が居るなんて……。


その日から、彼女とは学校で会っても、一言も話す事は無く、孤独の日々が再び始まりました。


この出来事以降、更に自分を出すのが億劫になってしまったわたしは、修学旅行も仮病で休みました。


「このままずっと、孤立したまま生きていくんだろうな……変わりたいな」


と、思いながらも変わろうともせず、気がつけば高校生になっていました。


高校生になってもわたしは孤立したまま。

そう思いながら迎えた、新クラスでのグループを作って自己紹介をするオリエンテーション。


そこでわたしは、出会ってしまったのです。


彼女……片名久留美さんに。


片名さんは自己紹介シートの趣味、好きなものを書く欄にこう書いていたのです。


アニメだよ〜☆アニメ好きな人はどんどん話しかけて来てね〜。

てか、誰でも話しかけて来てね!というかウチから話しかけるし!


この文を見てわたしは驚きました。

こんなにも自分を出していて、尚且つ積極的な人は中々いないと思います。

そんな彼女にわたしは、尊敬の念を抱くと同時に、こう思ったのです。


「わたしも、片名さんみたいになりたい。変わりたい」


直ぐ近くに目標の人が居るなら、わたしも変わろうと行動を移せるのではないか。

そう思ったのです。

幸い、このクラスには片名さんの他に、良い意味でうるさい、たかとうさんが2人もいます。

偶然ですが、そんな3人とわたしは席が近いです。

すでにもう仲間に入れてもらえてる気がします。

後はもう、わたしの頑張り次第。

受け身で居るのでは無く、積極的に……とはいかなくても、少しでも自分から関わって行きたい。


ーーーーー


長々と話してしまいすみません。


最初に言っていたわたしが頑張りたい事、それは。


「受け身で引っ込み思案な自分を変えて、自分の周りの状況を一変させる。です」


今回の校外学習はわたしの新しい人生の、最初の一歩です。


今のわたしは、変われるかな?とは思っていません。


必ず変わる。


そう、思えているのです。



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