第12話 出合荘の晩ご飯〜高校初日を終えて〜




〜山田春人〜


「「「いただきまーす!」」」


高校初日を終えた俺たちは、晩ご飯を出合荘の住人全員で食べている。


「いやぁー、うんめぇなぁ〜」


どこかの美食屋みたいな声をあげ、ご飯にかぶりつく真友。

今日のご飯は理香さんが1人で作ってくれた。

麻婆豆腐、春巻き、春雨サラダ、中華風あんかけなど、中華料理が揃っている。


「そういえば真友。今日の放課後どこ行ってたのさ」


俺は早速気になっていたことを聞く。

今は19時。

真友が帰ってきたのは18時だ。


「ん?どこ行ってたかって?フッフッフ。それはなぁ!当ててみて!解答権は1回!」


真友がうざい顔で俺の指をさす。


「だるい!その絡みだるい!無視して良いんじゃなーい?春人ー」


久留美さんもうざかっている。


「そうだね。もう興味なくなったしいいや」


本当は気になるけど。


「おいぃぃ!ちょ待てよ!教える教える!」


真友が焦って止める。

言いたかったんだろう。


「俺はバイト探しの旅に出てたんだ!高校生になったらすぐ始めようと思っててさ!」


「え!?お、驚いたな。バイト探してたんだ」


まさかの出来事に驚きの声をあげてしまう。


「へぇ。偉いわね。真友くん!」


理香さんがものすごい笑顔で真友を褒める。


「でへへ。あざーす!」


「うわっ!ひっどい顔!」


恵美さんが真友の褒められた嬉しさで溶けている顔に引く。


「てか、早くない?バイト始めるの。まだ初日だよ?」


確かに。

始めるとしても、せめて学校が始まって1週間後とかじゃないだろうか?


「まあ、早く始めることに越したことはないと思ってさ。ほら、お金欲しいじゃん?」


真友が当然だろ?見ないな顔で聞いてくる。


「まあ、お金は欲しいけど……ボランティア活動とかに支障は出ないの?まだ詳細は出てないけど」


そう。

俺たちにはボランティア活動がある。

これはおそらく放課後に行うこと。

同じく放課後にあるバイトと被らないだろうか?


「そうよ!あんた!まさかサボるためにバイト入れんたんじゃないでしょうね!?」


恵美さんが真友のサボりを疑う。


「待ってくれ!そんな邪な考えは無いぞ!ちゃんとボランティアがある日は休みだったり、時間ずらしたりしてもらう予定だから!それが通らなかったら……その時はその時さ」


「てか、どんなバイト始めたの?もう受かってんの?」


久留美さんの質問。

俺も気になっていたことだ。


「ん?ああ。俺が始めたのは早朝の新聞配達さ。火、水、金に入れてる。そこは受かってて、早速明日からスタートだよ。もう1つはまだ合否は来てないな」


「2個やるつもりなの!?どんだけお金に貪欲なのよ」


恵美さんが驚いた声を出す。

正直俺も驚いている。

まさか2つもやるつもりなんて……。

真友は高校生なのを利用してたくさん遊ぶと思ってたから。

ん?

そうか。


「真友。そのお金の使い道はもう決めてるの?」


遊ぶためにはお金が必要。

だから真友は2つもバイトを入れたんだ。


「ああ、決めてるぜ!半分は遊びでもう半分は貯金だ!こう見えても俺は将来を見据えてるんでね!」


そう言ってドヤ顔をする真友。


「最後のそれが無かったら、おおぉ〜ってなったのに。もったいなーい」


久留美さんが真友に呆れる。

でも真友、将来をしっかり考えてるんだ……。

俺は……全然……。

俺もバイトを始めた方が良いか?


「おい春人。お前今俺もバイト始めた方がいいかな?とか思ってないか?」


「え!?あー、いや、うん。思った」


15年一緒にいるから、真友にはなんでもお見通しらしい。


「あのなあ。いつも言ってるけど、俺は俺。春人は春人だから。春人がしっかり考えてバイトを始めるなら構わないが、俺が始めたから始めようなんて気持ちで始めるなら、俺は止めるぞ。なんか始める始める言いすぎて頭おかしくなってきたわ」


いつもそうだった。

中2の頃、真友が始めた塾に追って入った。

結果、自分で勉強してる時とほとんど成績が変わらず、真友より先に辞めた。

中3の頃、職業体験で行きたいところが決まらず真友について行った結果、何も得ずに帰ってきた。


「そうだね。ちゃんと自分で考えるよ。ありがとう」


俺も高校生になったんだ。

自分のことは自分で考えて決めなくちゃ。


「おう!んで、今日!高校生活初日が終了したわけだが、みんなどうだった!?」


続いて、真友が高校生活初日の感想を求めてくる。


「1組はどうだったよ?」


「別にどうもこうもないわ。まだ自己紹介しただけなんだから。何もわからないわよ」


恵美さんが答える。


「そうかぁ〜。一目惚れとかしなかったのぉ〜♪」


真友はすごくご機嫌な様子だ。


「はあ!?するわけないでしょう!?」


「てか失礼だけど恵美ちゃん、異性を好きになったことあるの?」


真友が踏み込む。


「ないわよ!そうゆう話苦手だからもう辞めてくれる?」


恵美さんが少しだけ頬を赤くする。


「おけおけ了解。なあ!これ見てくれよ!俺たちのクラスで配られたパンフレットなんだけど、すごくね!?」


すると真友は最初から用意していたのか、

足元からパンフレットを取り出す。

それを俺たちに渡す。


「へぇ。すごいな。ものすごく細かい」


そのパンフレットはこれからの学校行事や、時間割、学校の規則などがびっしりと細かく記載されている。


「え!?校外学習!?聞いてないんだけど!?」


恵美さんが驚きの声を上げる。


「校外学習だって!どこいくんだろ!楽しみね!愛希!」


「そうだね。同じ班になれるといいけど」


恵美さんがすごくはしゃいでいる。

初めて見る姿だ。


「そういや槍彦はどうだ?中2だろ?新しいクラスに友達いたか?」


「うるせぇ!嫌になるぐらいうるさい奴らと一緒になったわ!」


「そりゃあ良かった!今度そのうるさい奴ら俺にも紹介してくれよ!」


「嫌だね。頭が破裂するくらいうるさくなる予感しかしねぇ」


「ええぇぇ〜」


なんだかんだで真友と槍彦くん、恵美さんが仲良くなっていて良かった。



出合荘と私立楽青学園。

俺たちの新たなスタートは、実に好調だ!



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