第10話 高冬真友と1年3組①
〜高冬真友〜
クラス分けを確認した俺たちは、それぞれのクラスへと向かった。
俺のクラスは1年3組。
久留美と京夏ちゃんと一緒のクラスだ。
春人と離れたのは7年ぶりだから、少し新鮮な気持ちだ。
「さあ、着いたな。ここが、俺が1年間を過ごすことになる新たな場所か。一体どんな人が……
「あなた、1人で何を言っているの?邪魔ですので早急にどいてくださる?」
俺が新たな決意と共にドアを開こうとしていたら、後ろから1人の女子生徒に声を掛けられた。
1人?おかしいな、ここには久留美達が……あれ?
いないわ。
俺1人だ。
「ごめなさい!えっと、もしかして1年3組の生徒?俺もなんだよね!俺は高冬真友って言うんだ!よろしく!」
俺は相手が1年3組だと断定し、早急に自己紹介をする。
クラスメイトはみんな友達。
俺のモットーのひとつだ。
「いきなり、自己紹介なんて……わたくしが誰だかわかっていらっしゃるの?」
分かるわけねぇだろ!
と、ものすごくツッコミたいが、ここは我慢だ俺。
「ごめん!ちょっと君の正体は分からないや。いきなり自己紹介は嫌だったかな?でも、クラスメイトなら友達になりたいし……」
「ええ!?わたくしのことが分からないと!?まあ!そんな方がいらっしゃったのね。己の無知を恥じらいなさい!」
俺の友達になりたいアピールはスルーされ、俺は自分の無知を恥じらわなければいけなくなった。
え?そんな有名人なの!?この子!?
俺も勉強不足か……。
まだまだこの世には知らないことが沢山あるな!
「ごめんなさい!勉強不足でした!なので、この無知なわたくしめに貴女のことをお教えください!」
俺は素直に自分の無知を認め、彼女に教えを乞う。
「全く、仕方ないですわね……。いいですか、一言も聞き漏らさず聞きなさい!」
彼女は呆れた顔をしたあとに佇まいを直し、胸に手を当て高らかに語る!
「わたくしの名前は姫乃真輝。姫乃真輝といいます」
大事なことなのか、自分の名前を2回言ってくれた彼女の名は姫乃真輝。
身長は、屈辱だが俺より高い163センチくらい。
情熱的な赤髪のロングヘアーだ。
「なるほど。姫乃真輝ちゃんね。それで、どれほど凄いお方なのですか?」
「今から説明するのでおだまりになってください!わたくしは、この世を支える大企業、JTHの代表取締役の娘なのですわ!」
「JTHだって!?JTHって、あのJTH!?」
「ええ!そのJTHですわよ!」
まじか!あのJTHか!?
ちなみに、さっきから連呼しているJTHとは、「Japan Travel Himeno」略してJTH。先程彼女が言った通り、世界を支える大手旅行会社だ。
「わたくしはJTHの娘に生まれたことを誇りに思っています。わたくしは、この生い立ちに恥が無いように生きなければいけない。この学校に入学したのも、偉大な父からの試練。JTHの娘の名にかけて、必ず成し遂げて見せますわ!あなたも、わたくしの足を引っ張らないように精々頑張ってくださいまし!」
「なるほどなるほど。了解!俺も頑張るから、姫乃さんも困ったら俺を頼ってね!困ったときはお互い様だからね!」
「ええ。まあ、わたくしがあなたを頼ることなんてないでしょうけどね」
……、俺だけだろうか?
今の言葉はフラグにしか聞こえないんだが。
「それにしても貴方、身長がとても低いのですね。わたくしが知っている殿方は全員わたくしよりも高い身長だったので、不思議な感覚ですわ」
と、至って真面目に俺のコンプレックスを突いてくる姫乃さん。
「まじ!?姫乃さんより低い身長の殿方は、この世界に沢山いるはずだけどねー」
この世界は広い。
なんなら、俺より低い身長の15歳男子だっているはずだ。
いるよな?
「そうでしょうね。ただ、わたくしはあまり屋敷から外出することがなかったので、そうゆう方と会う機会が無かっただけですわ」
なるほど。
外に出たことが少ないなんて、社長令嬢らしいね。
「そうだったんだ。じゃあこれからは……
「おいお前ら、どけよ」
これからは学生なんだし沢山外に出れるね!と、言おうとしたらいかにもな悪いオーラを出している男子生徒に後ろから声をかけられた。
さっきも同じ感じで姫乃さんに声をかけられたな。
てか、ここは窓際だぞ?
邪魔にならないようにわざわざドアの前から移動したのに……。
「端っこにいるわたくしたちのどこが邪魔なのかしら?貴方が避ければいいだけの話でしょう」
姫乃さんが男子生徒に突っかかる。
姫乃さんが言ってることは正論だけど、それはまずい気がする。
「は?なんでこっちがわざわざ避けんだよ。くっちゃべるなら中でやれや」
男子生徒の方も当然反発。
面倒なことになる前にこちらが折れるしかない。
「すんません!邪魔しちゃって!今すぐ教室入るんで!それじゃ!」
俺は速攻この場から逃げようと、姫乃さんの手を掴んで教室に入ろうとする。
しかし。
「おい待てよ。そっちの女はまだ謝ってねぇだろ。しっかり謝れや」
くっそめんどくせぇ!
なんだこいつ!
「ふざけないでください。わたくしたちのどこに謝罪する要素があるのですか?貴方も!すぐ謝るなんて情けない……」
俺がすぐに謝ったことに呆れる姫乃さん。
面倒な人たちが相対すると本当にだるいな!
「すぐに俺には勝てないと悟って謝ったそのチビの方がまだ賢いだろ。状況判断が出来ないお前の方が相当馬鹿だぞ女」
もう姫乃さんを煽るのは辞めてくれぇぇぇ!
終わらねぇよこの状況!
教室に入る前からこんなことが起こるなんて……。
ん?あれは!
「貴方たち。後1分でチャイムが鳴ります。直ちに自分の教室に入りなさい」
先生らしき女性が俺たちに声をかけてくれた。
これはナイスだ!
助かった!
「うるせぇよ。俺は今こいつらと話してんだ。邪魔するな」
当然のように先生にも突っかかるヤンキー君。
なんて奴だ……。
「遠くから見てましたが、貴方が一方的に詰め寄ってるようにしか見えませんでしたけど」
どうやら先生は俺たちの様子を見ていてくれたらしい。
「それはてめぇにそう見えただけだろうが」
そう言って先生を睨みつけるヤンキー君。
……。
怖すぎて泣きそうになるな、全く。
「チッ。クソが!」
そう吐き捨て、この場から離れるヤンキー君。
なんで急に……とは思わない。
そう。
今俺が怖かったのは先生の方だ。
ヤンキー君が睨んだ瞬間、先生も睨み返し、先生の睨みを受けたヤンキー君がびびってこの場から離れた、とゆうことだ。
「さあ、貴方たち。早く教室に入りなさい」
「わかりました!ありがとうございます!」
しっかりお礼を言い1年3組に入る俺と姫乃さん。
出来ればさっきの先生は担任になって欲しくないな……。
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