逃げるギルドマスターの証
スライムさんの頭の上に乗せられた帽子……。それは、関西の名物といっても過言ではない、ソウルフードの形をしていた。いや、ソウルフードというと、語弊があるかも。
「たこやき……の帽子……」
スライムさんの頭の上に乗せられていた帽子は、すてきな青のり、ソースの柄が入った、たこやき風の帽子だった。ご丁寧に、つまようじの突起までついている。
「いやいやいや! これはもしかしてミスリード!? わざとこれがそうだと思わせておいて、これに触れると敵が大量発生する仕組み……!?」
ちょっと頭が痛くなってきた……。
『……ちなみにカズアキは、ウソはつけないタイプだ』
シュウさんが一言。それがヒントだとすると、これはやっぱり……。
「スライムさん、そのお帽子、貸してくださいいいいいぃぃっ」
私が思わず手を伸ばした瞬間、
「ミイイイィィィッ」
まさに脱兎のごとく、といった感じでスライムがすごいスピードで私から離れていく。足もないのにどうやってあんな速さで動いているんだろう。不思議。
でも、そんなことをぼんやり考えているヒマはない。急いで追いかけないと!
「スライムさん、待ってえええぇぇぇ!」
「え、そんなの攻撃を当てたら早いんじゃないのー」
のんびりした声でシュウカさんが言う。確かに、シュウカさんなら動き回っているスライムさんの動きを止めることも、攻撃してスライムを倒すことも可能だろう。でも。
「なんだか、そうしたらいけない気がするんです!」
攻撃したり、動きを止めて捕まえるのは、なんか違う気がする。
「何か確証があるのー?」
「勘です!!」
「か、勘なんですか……」
ヒナコさんが呆れた声で言う。そう、これはあくまで勘でしかない。だけど。
「絶対に捕まえてやりますからね!!!」
そう言いながら、スライムさんを追いかけまわす。自力で絶対に捕まえてやる!
「ミィー。ミッ!」
スライムさんは最初は忙しそうに動き回ってたけど。しばらくすると、なんだかニッコニコな顔で走り回っている。
「な、なんだか、サランさんとの追いかけっこを楽しんでるみたいです……っ」
ヒナコさんが笑っている。しかし、それどころじゃない。私は走りまくって疲れて来たんですよねぇえええぇ。
「もう疲れました……。スライムさん、一度休憩してもいいですかね……」
立ち止まる。すると、スライムさんも遠くの方で止まった。ゆっくり振り返ると、ぴょんぴょんとはねて、戻ってくる。
「……ミ?」
心配そうな顔で見上げてくるスライムさん。
「スライムさん、追いかけっこ、楽しかったですか?」
「ミ!」
頷くスライムさん。言葉がなんとなく分かるのかも。
「ミッ! ミッ!」
スライムさんが、びょーんと、頭の上を伸ばして、帽子を私の顔あたりまで伸ばす。
「……ん? 貸してくれるの?」
「ミッ!」
ニコォッ。スライムさんが目を細める。
「ちゃんと後で返すからね。ちょっと待っててね」
差し出されたたこ焼き帽子を、そっと手に取る。第一段階クリア……なのかな?
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