ヒナコさんの特別スキル
「え、え? ……サランさんも、特別スキルを……?」
ヒナコさんが、きょとんとした顔で言う。
「はい。まだ確証が持てないのでここだけの話なのですが、今現在この世界に取り残されているのは、『特別スキル』を持った人だけなのではないかと思っています。同時刻にログインしていた人達の中にも強制ログアウトさせられた人たちと、ゲーム内に閉じ込められた人たちが出たのには、何かしら法則があるのではないかと」
「『特別スキル』を持った人たちだけが、残された……」
ヒナコさんが呟く。
「ゲームにログインしていなかった人たちも、期日内にログインして条件をクリアすれば、ここに取り残され、条件をクリアした人たちと同様にこれからも自由にゲームを遊べるというメールが届いた人もいるようです。それがもしかしたら『特別スキル』を持った人たちだけを集めるために行われたものなのではないかと思っています」
「……サランさんの想像通りです。確かにわたしも、『特別スキル』を持っています。以前お話していた、『空想・実現(菓子のみ)』がそれです。思いえがいたお菓子を作ることができる。それが、わたしの特別スキルです」
やっぱりヒナコさんも、『特別スキル』の持ち主だったんだ……。
「わたし、料理本とか、素敵なお菓子が特集されている本を見るのが大好きなんです。それを見て、『ああ、わたしだったらこういうお菓子を作るのに』と、色々と想像をするのが楽しいんですよね……」
ヒナコさんは目を細める。
「ただわたし、あの……、料理の腕前が地獄級でして、ハイ。……見た目はすごくいい感じに作れますが、圧倒的に味がダメな感じでして。そのせいで、たくさんの人が犠牲となりました……」
うつむきながら、言葉を続けるヒナコさん。
「そんな時、このゲームに出会ったんですよね。この世界でなら、思い通りのデザインの、おいしいお菓子を作ることができた。お店の評判もよくって、店長からも喜んでもらえていたんです」
「これからもこのゲームで過ごすために……手を貸してくれますか?」
私の言葉に、ヒナコさんは少しだけ考え込む素振りをみせる。
「あのぅ。わたしなんかで、お役に立てるのでしょうか」
「もちろんです。ヒナコさんにやってほしいことが見つかりました」
「わたしに……ですか」
「そうです。ヒナコさんにしかできないことです」
それを聞いて、ヒナコさんの表情がかがやいた。
「わたしにだけ……ですか」
「はい。戦闘向きでなくても、なんとかできそうな方法、考えました」
「はい……?」
みんなが好きなようにゲームにログインしてログアウトできる状況に戻すために。絶対に何か方法があるはず。それを見つけたとしても危険が伴うと思う。
戦える人がいなかったとしても、戦闘になって大丈夫なように、準備しないとね。
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