ヒナコさんの協力
「そもそも、一体、何が起きているんですか……」
今のヒナコさんの表情を言い表すとするなら、『しくしく』が一番ふさわしい気がする。
「正直なところ、私達も何が起きているのか全てを理解しているわけではありません。今分かるのは、ゲーム内に閉じ込められた人と、強制ログアウトさせられた人がいること。あと、今ログインしようとしてもゲームにログインできる人とログインできない人がいることです」
「ああ、全員が全員、取り残されているわけではないのですね……。だからお客さんが減ってしまったんですか」
ヒナコさんの言葉に頷く。
「昨日までと今日、どういうところが変わったか、具体的に教えてもらえるでしょうか」
私が尋ねると、ヒナコさんはゆっくりと話し始める。
「えっと、えっと。……まずはお客さんが来なくなったんですよね」
「ふむふむ」
「お客さんが来ても、あわてている人が多くて。急いで条件をクリアしないとってあわてている人ばかり」
「条件をクリア……」
多分、ムトウさんがこのゲーム内に取り残された人々に課した、ゲームから自由にログアウトする権限と、今後も自由にログインできる権利だよね。
「多分ですけどみなさん、元の世界に戻るために既定の条件をクリアしようとしているんだと思います。条件をクリアしないと自由にログアウトできませんし、今後ログインできなくなるという話ですから……」
私の言葉に、ヒナコさんはうつむく。
「ああ、運営から届いたメールの話ですね。条件って、あの、結構、難しい感じでしょうか……」
「まぁ、簡単ではなかったかもしれません……」
裏運営が提示しているクリア条件は、もしかしたら私達がクリアした条件以外にもあるのかもしれない。でもとりあえず、私達がクリアした条件は、簡単ではなかった。
ヒナコさんは、ああ、どうしようと顔をしかめる。
「わたし、戦闘向きではないんですが、その、なんとかなりますかね?」
「一人だと厳しいかもしれません。でも、私たちがついてます」
私とシュウカさんは頷いてみせる。
「ああ、助かります。わたし、このゲームでやっと、自分のよさが認められた気がするんです。自分に自信が持てたんです。思いえがいた通りに自分の作りたいものが作れるこの世界を、失いたくないんですよね」
「私もです。ですから、協力しあいたくて来ました。ヒナコさんがこれからもゲームで楽しんで遊べるように、私達は条件をクリアするお手伝いをします。その代わり、私達がこれからやろうとしていることのお手伝いもお願いしたいのです。そのために」
私はヒナコさんの顔をまっすぐ見た。
「私は、特別スキル『言霊・物語付与』というものを持っています。ヒナコさんが前に私に教えてくれたスキル『空想・実現(菓子のみ)』は、特別スキルですよね?」
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