特別スキルの使用回数上限
「オブジェクトに目印なんて、つけられないですよっ」
当たり前じゃないですか、と遠くからずんだ餅さんの声が聞こえてくる。確かに。今までのゲームで、オブジェクトに目印なんてつけられなかったかも。
「でも私には、特別スキルがありますっ!!」
私の言葉に、シュウさんが遠慮がちに声をかけてくる。
『……しかし現在、命の危険にさらされているわけでもないのに、特別スキルを使用するのはどうなんだ? 今、5回しか使えないスキルをもう、2回使っている。今もしまた使うとすると、3回使用し、残りは2回。万が一、日付が変わってもスキルの回数制限が解除されなかったらどうするんだ』
シュウさんの言葉に、一瞬言葉が詰まる。確かに今は、いつもとはゲームの状況が異なっている。もしかしたら、現実世界での日付変更があったとしても、ゲーム内には反映されないかもしれない。
反映されなかった場合、いつもなら現実世界で日付が変わったときに更新されていた特別スキルの使用制限解除も、できなくなってしまうかもしれない。
でも、なんとなくそれはない気がしていた。
「もしこの一連の出来事を起こした人物がムトウさんだったとしたら、そんなことはしないと思います」
『それはなぜだ』
「だって、相手から特別スキルを奪い取れなくなるかもしれませんから。特別スキルの使用制限を日付変更で解除できなくするシステムを作って万が一、その弊害として、ムトウさんが人の特別スキルコピーに支障が出たら、元も子もないですからね」
テストをせずに、一発勝負でいきなり私たちをこのゲームに閉じ込めたのが本当にムトウさんなら。そしてムトウさんの目的に、『人の特別スキルを手に入れる』ことが含まれているのなら。しないんじゃないかと思う。
「ムトウさんの特別スキルコピー能力がどういった条件で発動できるか完全に分かっているわけでない以上、断言はできませんが。特別スキル保持者がスキル上限まで、回数を使いきっている時にはコピーできてない、という条件があったとしたら、通常のゲームとシステムは同じようにしていると思うんです」
『……そうだな、ぶつけ本番で実行をしたのだとしたら。下手に色々条件を変えたら、何か向こうにとって不都合が起きる可能性が上がるかもしれないからな。それは向こうからしたら避けたいだろう。システムは変えてなさそうだな』
シュウさんに言うまでは私自身あまり自信はなかったけど、シュウさんが納得してくれたことで一気にその可能性が私の中で上がった。
よし、これで安心してダンジョン突破に向けて特別スキルが使える。あとは、1階クリアするごとに、脱出できるシステムがあると、なおいいな。
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