マーキング・パウダー
『とはいえ、1日に5回しかスキルが使えないことには変わりない。ダンジョンの途中で、脱出できるシステムがない限りは、結局のところ、ダンジョン攻略するのに使える特別スキルは少ないと思った方がいい』
確かに。じゃないと、今回のフロアで使い切った場合、ずーっと日付変わるまで1日中逃げ続けないといけなくなる可能性があるってことだもんね。
まぁ、今から作るアイテム、もしかしたらまた後で使えるかもしれないし、いっか。
「『特別スキル【言霊・物語付与】』を使います」
あ、でも元になるアイテムがないな。そんなことを思っていたら、オブジェクトの鉢植えが目に入った。大きな鉢植えに入っている、真っ白い大きなお花。茎、そしてその下には……大量の土。
「うーん、オブジェクトは使えないもんね……」
そう思ったら、ポップアップ画面が現れる。
『【オブジェクト・土】に【言霊・物語付与】のスキルを使いますか』
「使えるんだっ!?」
思わず叫んでしまう。
「え、なになに?」
気づけば、シュウカさんが後ろに立っていた。
「あ、シュウカさん。……実はオブジェクトも、特別スキルの材料にできることが分かったんです」
「おお、それはスゴイ」
「ちょっと二人とも、そっち行ってますよっ」
ずんだ餅さんが悲鳴に近い声を上げる。後ろを振り向けば、確かに敵が迫っていた。いったん、二人とも別々の方向に逃げ、私はまた、同じ場所に戻ってきた。
スキルを使用する。
『【オブジェクト・土】を【マーキング・パウダー】に作り替えました』
ポップアップ画面が表示される。そっと触れないはずの、土のある場所に触れる。ざらざらとした感触がした。シュウカさんに声をかけた。
「シュウカさんシュウカさん、何か袋みたいなもの、持ってませんか」
「あ、賞金入れてた袋ならあるよ。捨てられなくて、いくつか持ってるわ」
「それ、3つ貸してください」
「はいよー」
シュウカさんが走り寄ってきて、私の手に3つのズタ袋のようなものを渡して走り去っていく。今、シュウカさんに注意が向いているんだ。
私もいったんそこから離れて、また同じ場所に戻ってくる。そして、【マーキング・パウダー】を3つの袋に分けて入れた。
『【マーキング・パウダー】……触り心地は、ただの土。しかし、あなどるなかれ。とある童話で子どもたちが自分の家に戻るのに使った小石と同じ効果を発揮する。しかも、使った本人が袋に戻れと命令するまで、その場から絶対に動かない。風が来ようが、間違って恐竜が食べようとしたって、絶対に外れない魔法がついている。うまく使えば、モンスター相手などにも使えるかも』
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