鬼ごっこ、スタート!

 鬼ごっこ。その響きを聞いて、少しわくわくしてきた。もしつかまって攻撃でもされようものなら、もしかしたら死ぬかもしれないけど。


 小学生の時、よく鬼ごっこしてたなぁ。私、体育は苦手なんだけど、走るのだけは得意だったんだよね。


 鬼と勝手に命名し直した敵は、私たちが三方向バラバラに逃げたので、誰を追いかけるか、迷っているみたい。結構大きいし、移動するときは、何かを引きずる音が聞こえるから、探索しながらゆっくり逃げても、なんとかなりそう。


「それじゃあ皆さん、探索しながら逃げ回りましょう。他と違うところがないか、全てオブジェクトがどうかなど、調べながら逃げるんです」

「あと、今は相手の動きがトロいから、早足くらいの移動でいいと思うよ。向こうが本気で走ってきた時とかだけ、全力で逃げないとこっちの体力が持たない」


 シュウカさんの言葉に納得する。確かに。ゲーム内のパラメーター上はスタミナとか、出ないけど。とはいえ、実際に走っているようなものだ。走り続けてたら、こっちがバテたときに襲われないとも限らない。


「しっかし、広いなぁこのフロア……っ」


 シュウカさんのぼやきが聞こえる。確かに、これだけ大きかったら、探索も大変だ。これが本当にただのゲーム、それも娯楽としてやってるゲームなら、


『こんな広いマップを用意してくれて、しかも細部まで作り込んでいて、ゲーム会社さん、神!』


 そう思えるんだけど。今回は、そうじゃない。だって命に危険が及ぶかもしれないし、もしかしたらこのダンジョンが、ゲームから脱出する方法かもしれないから。真剣に取り組まないといけない。


 できるだけ早足で歩きつつ、敵の注意がこちらを向けていない時は、じっくり探索を進める。


「今さらなんだけどさっ、これ、誰がどこ見たか分からないから、二重三重で見て回ってることにならない!?」

「ある意味、それも狙いです! ですが、ちょっとこれだと終わりが見えないですね」


 そう、積み上げられた書類とかを目印にして、一番上に置いてある紙をひっくり返す、とかできればよかったんだけど。全部オブジェクトのせいでそういう目印がつけられない。何人かの目で見たほうがいいから、目印はいらないかなーと思ったんだけど、よく考えたらこれじゃ、無限に見て回ることになる。


「それでは、目印を作るとしましょう」

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