情報収集開始! ……のはずが

 完成したアヒルマウスとパソコンもどきを前に、腰に手を当てる。


「なんだか、満足そうですね」


 ずんだ餅さんが言う。


「これで情報が集められますからっ!」


 ちょっとくらい、どや顔したっていいと思う。ある意味ですごい発明だもん、これ。


 そうしてふと、もう一つ、足りないものがあることに気付いた。いや、気付いてしまったという方が正しい。


「どうしたんですか」


 思わず硬直してしまった私に、ずんだ餅さんが声をかけてくる。


「……ずんだ餅さん、気付きませんか」

「なんでしょう」

「パソコンには、もう一つ、必要なものがあるはずです」

「と、言いますと」

「電源です」


 私の言葉に、ずんだ餅さんがはっとする。


 そう、私たちは完全に忘れていたけれど。現実世界のパソコンには、電源が存在する。パソコンは電力を必要とするので、電気をためておく電源プラグ、充電器があるのだ。


「この世界に、そもそも電気という概念は存在するのでしょうか……」


 いかん、頭が痛くなってきた。


「そこは、羊皮紙の力で浮かび上がってるっていう設定とかにしてしまったらいいのではないでしょうか……」


 半ば呆れた表情で、ずんだ餅さんが言う。確かに。リアリティを追求しすぎたかもしれない。とはいえ、特別スキルでそういった設定をした覚えはないけど、ちゃんと作動するんだろうか。


 そう思いながら、こわごわパソコンもどきのキーボード代わりの木の板に触れる。すると、羊皮紙に、何やら文字や絵が浮かび上がり始めた。


「……よかった、動きました」

「よかったですね」


 そこまでリアリティは追求しなくてよかったんだね。そこは、羊皮紙の力でどうにかなったという認識でいいんだろう。


 羊皮紙に浮かび上がった画面は、まさにパソコンと同じ。思い描いていた通り。検索エンジンのアイコンをアヒルマウスでクリックする。


 そこには、いつも使っている検索エンジンと同じように、自分がよく使うサイトのショートカットが6つほど、表示されている。


 そこまで望んでなかったけれど、どうやら家にある自分のパソコンと同期しているようだ。早速、アヒルマウスを操作して、ポイッターの画面を開く。


 ポイッターの検索画面で『WFO ログインできない』と検索しようとする。その前に既に、ポイッターのトレンド欄が目に入った。


 トレンド欄は、ポイッターでポイートされた情報をもとに、ポイートの多い情報をトレンドとして表示する機能。


 私は普段、トレンド欄はほぼ見ることがないんだけど……。WFOのことが載っているかもとちらと目線を向ける。


 そこには、いくつか、WFOのものと思わしきものが上がっていた。


 

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