パソコンに必要な、アレ。

「アレ……ですか」


 ずんだ餅さんが首をかしげている。


「アレですよ、パソコン作業に必要なアレです」


 そう言いながら、右手の人差し指でカチカチする仕草をする。


「……あっ! マウスですね」


 ずんだ餅さんもついに気づいたみたい。


「そうです、マウスです」


 モバイルパソコンとかだと、ついてないものもあるけど。私はやっぱりマウスが欲しい。クリックする動作も楽しいよね。


「問題は、マウスをどんなアイテムで作るかです。ちゃんと、クリックしたら沈み込むタイプがいいです」


「キーボードは、木の板なのにですか」


 ずんだ餅さん、なかなかツッコミが鋭い。


「クリックの時の、カチカチが楽しいんじゃないですか」


 本当はキーボードだって、全部ボタンごとに沈み込むタイプにしたいけど、あれだけたくさんのボタンがついてるアイテムが思いつかなかったんだよね。


 いや、今更思ったけど、何もボタンが元からついているものでなくてもいいのか。木の板に一つ一つ木の実をくっつける、とかでも代用はできたかも……。いやいや。


 押すたびに、果汁が飛び出る様子を想像して思わず顔をしかめる。


「……すみません、余計なこと言いましたか」


 ずんだ餅さんが心配そうに私の顔を覗き見る。


「あ、いえ、変な想像をしてしまいまして……」


 脳裏にこびりついて離れない想像を振り払うために、首を勢いよく振り払う。


「クリックできるようなアイテムか……」


 ボタンが二つあって。うーん難しい……。


「あー、いや、押せればいいか」


 考えても埒があかない。こうなったら、押せたら何でもいいや。


「諦めるのが早いですね」


 ずんだ餅さん、やっぱりツッコミが痛い。


「いいんですよ、それよりも情報収集の方が大事ですからっ!」


 もっともらしいことを言ってるけど、本当は悔しい。とても悔しい。モチベーションは大事だからね。


「いや、そもそもボタンは二つなくてもいいのか」


 よく考えたら、右クリックと左クリックが認識さればいいから、ボタン自体なくてもいい。柔らかい材質のもので右半分を押すのと左半分で押すので右クリックと左クリックの役割の代わりをしてくれれば問題ないんだ。


 その時、かわいいかわいい、アヒルみたいな鳥の置物が目に入った。思わず、触ってみる。おお、シリコンみたいな感じの柔らかさ。これだ!


「……まさかとは思いますが」


 ずんだ餅さん、ご明察。これをマウス代わりにしちゃう。


「特別スキル『言霊・物語付与』で【ごく普通の置物】を【アヒルマウス】に作り変えます」

 




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