謎の男の正体を考える
「そちらが以前出会ったあの男、彼について色々と調べてみようとした」
「はい」
「しかし、こちらはあまり、そーしゃる、ねっとわーくに詳しくない」
「ああ、SNSですね」
月島部長は顔をしかめる。
「そうだ。自分自身、その、そーしゃる、ねっとわーくはやっていないからな」
「SNSでの情報でしたら、私が持ってます」
「そうか、それは助かる」
月島部長は心底安心した顔をする。
「もし、そちらも、えすえぬえす? とやらに疎いようなら、面倒だが田尻課長に手伝ってもらおうと思っていた。しかし、アイツに借りを作るのは癪だ」
「SNSで、同じような事例に遭遇した人間を探したんです。そしたら、結構な数の人がいることが分かりました。仕事として動けるのでしたら、その人たちに直接コンタクトをとってみることもできると思います」
「本当か」
「はい。……今までの私はあくまで、巻き込まれた側の人間でしたし、なおかつ会社のうしろだてがありませんでしたので、下手に動くのは得策ではないと思っていたんです。でも、会社の仕事として任せてもらえるのであれば、こちらも積極的に調べて、相手との連絡を取ってみることはできます」
「では、えすえぬえす、での相手との接触するまでの過程は、そちらに任せてよいだろうか」
月島部長の問いに私は答える。
「はい。要は相手と会う約束を取り付け、具体的な日程を決定するところまでこちらで手配すればいいんですよね」
「ああ。接触は、一人では危険だ。こちらも同行するようにする」
「ありがたいです」
そう、一人で動くのはさすがに危険すぎる。そういった被害を受けたように見せかけて、相手をおびき寄せる罠の可能性もある。一人で見ず知らずの相手と接触するのは、いささか不安があった。
「以前、こちらがあの男のことを、『どこかで見たことがあるような気がする』と言ったことを覚えているだろうか」
月島部長が身を乗り出してくる。
「はい」
私は頷く。そういえば、あの男の人のところから帰還できたあと、そんなことを言っていた記憶がある。
「あれから考えたんだが。ゲーム内で出会ったとはどうしても思えなかった。なにしろ、フリントのようにこちらは、見ず知らずの人間とパーティを組んでダンジョン攻略をしたりはしなかったからな。だから、プライベートで面識のある人間か、仕事で出会った人間の可能性が非常に高いと考えた」
「なるほど」
月島部長はSNSは苦手だと言った。ゲームのダンジョン攻略のパーティ募集などはSNSでは活発に行われているけど、月島部長はSNSに疎いから、そもそもそういった場での参加はできない。さらに、ゲーム内ですれ違っただけなら一、二度しか見ていない顔を『見たことがある』と記憶することはほぼないと思う。
だとしたら、やっぱり『シュウ』としてではなく『月島部長』または、『月島修矢』としての彼と面識のある人間、ということになるのは必然だよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます