面接前

 数日後。私は、面接のためナイトメアソフトウェアの本部へとやってきた。大きなビル。今働いている場所の、倍以上大きいと思われる場所。


 履歴書の入った茶封筒を胸に抱きしめる。膝が震えているのが、自分でもわかる。そっとビルの入り口の自動ドアを抜けた。入口すぐの受付のところで、受付のお姉さんがいた。


「あの、すみません。……本日面接のお約束をさせて頂いております朝宮紗蘭と申します」


 そう声をかけると、受付のお姉さんは営業スマイル。そして、パチパチと目の前にあったパソコンを叩き始めた。多分、会社共通のカレンダーか何かを確認してくれているんだ。


 それからすぐに、また私に笑顔を向ける。


「朝宮様ですね。お待ちしておりました。そちらのエレベーターで、10階にお越しください」


 私は受付嬢さんにお礼を言って、エレベーターに向かう。10階に到着した。すると、エレベーターを降りてすぐのところに、おそらく働く人たちが休憩できるカフェスペースがあるのが見えた。


 その手前に、受付があってそこにも受付嬢さんがいる。その人にも声をかけた。


「あのう……」

「朝宮様ですね。お待ちしておりました」


 わお。1階の受付嬢さんと連携してるんだな。私はそう思った。


「そちらのカフェで、掛けてお待ちください」


 私は言われるがまま、カフェテリアスペースに入る。そして、端っこの方のテーブルを選んで座った。すぐに、お茶をお盆に載せた受付嬢さんがやってきた。


 受付嬢さんは、小声で声をかけてきた。


「月島部長が今日、ずーっとそわそわされてるんですよ……。きっと、朝宮さんが面接に来られる日だからですね」

「月島部長……」

「月島修矢部長です。月島部長が、朝宮さんの社員登用手続きを担当されたんですよ」


 それを聞いてはっとなった。しまった、シュウさんの本名を聞いてなかった。なんなら、彼の役職も。


 でも、受付嬢さんの話を聞いて分かった。彼の本名は月島修矢。そして、部長。私は、開いた口がふさがらない。そんな私の姿を見て、受付のお姉さんはふふっと笑った。


「部長、自分の本名も伝えてないって焦ってました。でも大丈夫。面接の間は、ずーっとあそこから見てるつもりみたいですから」


 そう言って、軽く私の後ろをあごでしゃくる。私がそおっと後ろを振り返ると、一人の男性が視界に入った。


 コーヒーか何かの入ったカップをおともに、何やら真剣な顔をしてパソコンの画面に向かっている男性。その顔は、初めて見る気がしない。


「あのゲームは、プレイヤーの顔を反映しますから。……見たことある気がするでしょ?」


 私の表情を読み取って、受付嬢さんがウインク。


「はい、そんな気がします」

「あれが部長です。何かあればきっと助けてくれます。部長、あなたをなんとしてでもうちの部署に入れたいみたいでしたから」


 私はそれを聞いて、すごく嬉しくなった。こんなに心強い人が近くで見ている。何とかなる気がしてきた!

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