平原での作成アイテムその1
『【魅惑の花】に言霊・物語付与のスキルを使用しますか』
ポップアップ画面のアナウンスに、私は首を縦に振る。そして、出てきたアイテム名と紹介欄を編集していく。
「アイテム名【魅惑の毒スプレー】。このスプレーの液体をかけられたものは、必ず気絶する。大型モンスターなどにも有効」
『アイテム名および効果の変更が完了しました』
私はもう一度アイテムを見て、驚いた。私が書いたアイテムの紹介文に私が書いた覚えのない文言が増えていた。
『ただし、ボスモンスターとの戦闘では使用不可』
ボスモンスター。ゲームではよく聞く響きだ。そしてこの世界は確かに、ゲームの中。ボスモンスターがいたっておかしくない。
ボスモンスターとは、たとえばRPGにおいてのその章、またはそのエリアの一番強い敵という位置づけでいいと思う。
ゲームによっては中ボス、ラスボス、裏ボス、などの言い方があるゲームもある。そしてボスモンスターは通常の敵とは違って、色々と使用アイテムや魔法の効果などに制限がかかる戦闘が多い。
たとえば、敵を状態異常にすることができなかったり、自分の能力を上げるアイテムは使用できるけれど、敵の能力を下げるアイテムは使えないというルールとか。
私は今まで街の中にこもっていたからわからなかったけど、このゲーム世界にもあらゆる場所にボスが配置されているのかな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、私は見た目も効果も変化した、『魅惑の毒スプレー』を眺めた。小瓶になみなみとピンク色の液体が揺れている。
「なかなかいいアイテムができたな」
「はい。これが量産できれば、売れ筋商品になりそうな予感はしますね」
だって、一定時間敵の動きを止めることができるんだもん。それにモンスターを討伐じゃなくて捕獲することもできるかもしれないし、きっと戦闘のバリエーションが増えると思う。
旅に出て早々、アイテムを作ることができた。きっともっともっと、いいアイテムを作るためのヒントが手に入るはず。私は、さらにやる気が湧き出てきた。
この世界に来たばかりの頃に作り替えたトランクに、スプレーを収納した。それを見届けると、シュウさんは言った。
「このあたりの地形は頭に入っている。そちらの思う方向に進んでみたらいい」
つまりは好きな方向に進んでよくて、何か見たいものがあれば立ち止まっていいってことだよね。シュウさんはゲームの発売2日目にして、プレイヤーレベルが60になっていたような猛者だ。レベリングなどのためにきっと、ここに何度も来たことがあったはず。心強い。
「それではお言葉に甘えて。思うままに進んでみますね」
私はシュウさんにそう前置いて、平原の中央部へと歩き始めた。
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