新たな素材発見
とりあえず、目につくものを観察してみよう。私は思いながら歩く。今までずっと街の中にいたから目に入るものすべてがむしろ、真新しく映るれど。
しばらく歩いていくと、物騒な形をした実のなっている植物を見つけた。これは、いったい何だろう。さっきの『初見殺しの花』みたいに触ったらゲームオーバーになるような危険なものかもしれない。私は、後ろからついてきていたシュウさんに声をかける。
「シュウさん、この植物は何ですか」
シュウさんは私の傍らに来ると、興味深げに植物を見た。
「これは、バクハツの実だ。その名の通り、何かにあたると爆発する特性を持っている。ただ、枝に触れるだけなら爆発しないんだ」
そう言って彼は、そおっと実に触れないように気を付けながら実のなった枝ごと折って、私にみせてくれる。おお、枝ごしに触るのは大丈夫なんだ。
それにしても、触れたら爆発する実か。これは、アイテム化したら面白そう。私は、さっそくこれにも言霊・物語付与のスキルを使用することに決めた。
『バクハツの実に言霊・物語付与のスキルを使用しますか』
ポップアップ画面に誘導されて、私はさっそくバクハツの実を作り変える。
『【ネムネムバクダン】。投げつけると、周囲の敵を眠らせる効果のある煙をまき散らす』
すると、シュウさんが持っていたバクハツの実は、いかにもバクダンという感じの形の水色のアイテムに変わった。シュウさんからアイテムを受け取ると、いつものトランクに押し込む。ちゃんと、『投げつけたら』という条件をつけたから、トランクの中では爆発しないはず。多分ね。
このバクハツの実で、いろんな種類のバクダンが作れそう。私は、以前シュウさんにもらって、スキルで作り変えた羽ペンと手帳を取り出すと、バクハツの実をメモした。あと、バクハツの実で作れそうなアイテムの案。そして、クエスト受注所でもらった地図にバクダンの実の絵を書き記す。これで、バクダンの実がある場所をメモしておいたから、地図さえなくさなければ大丈夫。
1つの素材から、たくさんのアイテムのアイデアが浮かんでくるもんなんだね。私はアイテムの案を書き記しながら思う。やっぱり、いろんな場所に出かけて行って、何かを見たり聞いたりするのは大事だってことを改めて思う。
あれもこれもと書き足す私をシュウさんはどこか楽し気な表情で見守ってくれている。同じ場所に長い間とどまり続ける私をとがめることなく、せかすこともなく、彼は何も言わず待機してくれていた。それが、私にとってはとてもうれしい。
10分ほど経過したとき、私の今浮かんでいるアイデアはすべて手帳に書ききった。私はシュウさんにお礼を言うと、先へと進み始めた。
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