地図を広げる。


「まずは、どこを目指して進んで行くか決めないとね」


 フジヤさんの言葉に、私は頷く。お店の中で私とフジヤさんは地図を広げていた。どの方角に進むかを決めるのも大切だ。もちろん、まったく行き先を決めずに行きあたりばったりに旅をするのもいいけど、そういった旅でも、とりあえずの目的地は決めておいた方がいい。


 何しろ、この世界自体はまだまだ私の知らないところだらけだ。見知った土地で旅をするわけじゃない。だから行こうと思う場所や、そこに何があって、どんな危険が潜んでいるかをしっかり下調べして旅に出る必要があると思う。


「ここは、役割分担しない?」


 フジヤさんが気軽そうに言った。


「役割分担、ですか」

「うん。私は店のチラシのデザインを考えながら、この地図を見て旅できそうな場所をいくつかピックアップしてみるよ。サランちゃんは、元の世界の攻略情報サイトなんかを見ながら、初心者でも出かけられそうな場所を探ってほしいんだ」


 フジヤさんの言葉に、私は納得する。確かに、二人で地図を覗き込んでああでもない、こうでもないと議論するのもいいけれど、それはある程度行く場所の候補が定まってからでいい。今は、選択肢が多すぎる。


 だから、フジヤさんはこの世界で、私は現実世界で色々調べてみて、情報を持ち寄って候補地をまず決めてしまった方がいい。言われてみれば、そうだと思う。


「いい考えですね。では、私はログアウトして色々調べてみます」


 今日の分のスキルは使い切ってるしね。私は、フジヤさんやカンナさんに挨拶を済ませると、ログアウトした。


 そして、自分の部屋に戻り、パソコンから攻略情報サイトにアクセスする。始まりの街から近い、レベル上げにおすすめのエリアを検索していく。


 どうせなら、景色が綺麗な場所とか、謎めいた建物とかがあるようなエリアがいいな。私がそう思っていると、新着メールが1通届いた。フリントさんかな。


 受信箱を見てみると、カズアキさんからだった。添付ファイルが一つついている。


『旅には同行できへんから、おすすめのエリアをまとめてみたで。これは、シュウと俺で実際に行ったことのあるエリアで、始まりの街から近くて、景色もええ場所ばっかりや。今回は初めての旅やし、近場にしとく方がええと思うねん』


 添付ファイルを開くと、ポップなフォントで書かれたおすすめのエリアがまとめられた書類だった。これは、ありがたい。カズアキさんの手書きだろう、イラストも載っている。


 私は、カズアキさんにお礼のメールを返信した。そして、カズアキさんの送ってくれたデータと攻略サイトを見比べながら、旅する場所の候補地を決めにかかったのだった。

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