クエスト受注所へ


 私はお茶を飲み干しにかかる。カズアキさんが背もたれにもたれかかった。


「しっかし、アイツらも暇よな。仕事してるんかいな」

「そもそも年齢が分からないから、仕事を始めている年齢かも分からないぞ」



 シュウさんが言うと、カズアキさんがぽんと手を打つ。



「あ、そりゃそうやな」

「お待たせしました、ごちそうさまでした」



 私が言うと、カズアキさんも笑う。


「ええよ。そんなにおいしそうに食べてくれるんやったら、いつまでも待つわ」

「年が明けるまでに食べ終わってくれればな」


 シュウさんが冗談めかして言う。職場の男性陣にもそれに近いことをいう人、いたな。


「早くしてくれないと、日が暮れてしまうよ」


 でも、シュウさんの言い方とは違った印象を受ける。なんでだろ。そんなことを考えながら、私たちはクエスト受注所へと向かう。


「今頃クエスト受注所、大混乱やろうな」



 カズアキさんが言うと、シュウさんは小首をかしげる。


「……いや、今は夜中だ。少なくとも昼間よりは混雑していないだろう」

「ああそうか、今、夜中やったな」

「すみません、こんな時間になってしまって」


 私の仕事終わりに待ち合わせしたせいで、もう夜中の1時だ。


「いや、気にしてへんよ。どうせ夜中までゲームして遊んでるしな」


 カズアキの言葉に私は安心する。そうこうしているうちに、私たちの歩いでいる先に大きな建物が見えてきた。レンガでできた、西洋づくりの建物。建物の前にある門は、大きく開かれていて、両側についたカンテラがこうこうと辺りの石畳を照らしている。


「あれが、クエスト受注所ですか」

「ああ」

「なんや、一度も行ったことあらへんかったんか。あそこの受付嬢、かわいい子ばっかりでな」


 カズアキさんが夢見心地で言う。シュウさんが傍らで大きなため息をついた。


「用もないのに、受付嬢をナンパするんで困っていたんだ」

「そりゃあ、困った人ですね」

「だから、こちらが止めそこなった時には、そちらにカズアキのストッパー役をお願いする」

「承知しました」

「なんでそこで結束固めてるねん」


 カズアキさんは呆れた様子で肩をすくめた。私たちは門をくぐり抜け、建物の内部へ入る。大理石の床を歩く足音はまだらだ。まぁ、夜中にクエスト受注に来る人は、少ないだろうね。


 建物の中心部、吹き抜けになっている広場のような空間。そこにいくつものカウンターが並んでいる。そこに綺麗なお姉さんが何人も立っている。ああ、あれがカズアキさんの言っていたクエスト受注所の受付嬢さんかな。


 クエスト受注所の受付嬢さんって、NPCなのかな。まぁ、VRMMOだとNPCって感じがしないよね。この世界ではみんな生きてる。


「よし、片っ端から分かれて話を聞いていくで。今、お客さんはおらんみたいやしな」


 カズアキさんの言葉で、シュウさんが再びためいきをつく。


「何を聞くか統一もできていない以上、固まって動く方が効率がいいだろう」


 シュウさんの言葉に、カズアキさんが頷く。


「それもそうか。ほんじゃ、その端っこの人から聞いていくで」


 カズアキさんがスキップをしながら一番左端の受付嬢さんの方へと向かっていく。私たちはその後をゆったり追いかけたのだった。

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