【対峙】
「せっかくだしさあ、団体戦、しようぜ」
そう言ったのは、内子。現在は公務員をしており、二年前の部長である。
部室には、11人の人間がいた。現役7人、そしてOBが4人。
部長の覚田が、一瞬険しい顔をした後、口角を上げた。
「そうですね、こんな機会、めったにないですし」
「じゃあ、7対7っていうのはどうだい」
小北が、人差し指を立てながら提案した。現役たちが顔を見合わせる。ビッグ4はもちろん四人しかいないし、ここにいる全員を合わせても3人足りない。
「ええと、それはどういう……」
「大会の練習になるだろ? まあ、でもこっちは5人でいいよ。6、7は不戦敗で」
「でも、先輩たちは4人ですよ」
「1人こちらにもらおうか。そっちは6人と、夏島の名前を書けばいい。2勝したら勝利。いいハンデだろう」
「それで、その1人は」
「まあ、野村かな。俺たちと並べるのは」
「……」
伝説のビッグ4に加えて、エースの野村。ここにいるメンバーの中で、最強の5人で組むと小北は言っている。いくら2勝分のハンデがあるとはいえ、現役チームにはきつい当たりであることは確かだった。
「いいっすよ、やりましょうよ」
すぐに応えたのは、中野田だった。
「もう一人威勢がいいのがいたんだな」
「び、ビッグ4と対戦……」
福原はおびえているような喜んでいるような、とにかく震えていた。
「あの、俺が先輩チームって……」
「野村は俺らが育てたみたいなもんだからなあ、なあ!」
内子は、ばんばんと野村の背中をたたいた。
「部長、いいじゃないですか。俺、小北さん以外にも勝ってみたいです」
蓮真の言葉に、小北のこめかみの血管が浮かんだ。しかし、表情は変えないように努力していた。
「あっはっは。いやー、健ちゃん大変だねー」
「本当に」
部屋の端で将棋を指している二人が、初めて声を出した。松野と瓦。ビッグ4残りの2人である。
「ちょっと、お前らもやるんだから」
「わかってるよー。でもさー、久々の団体戦が後輩たちとだなんてね。しかも、最下位チームなわけでしょー。あ、そこからエース抜きか」
「勝てるね」
「健ちゃんだけ負けたりしてねー」
「うるさい」
「……ふふ」
覚田は、少し感動していた。かつては、部に活気があった。そしてその中心には、常にビッグ4がいた。良くも悪くも、彼らがすべてを動かしていたのだ。
決別しなければならない。部を壊した者たちと。心地よさを与える思い出と。覚田はそう思いながらも、どうしても懐かしさの中に留まっていたくなるのだった。
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