【2回戦】

「健闘したよ、よくやった」

 昼食後、覚田は蓮真だけを呼んだ。

「正直、2勝でもおかしくないと思っていた」

「中野田ですか」

 蓮真は、落ち着いていた。

「うん、相手のエースに勝っちゃった。彼もすごいね。うちは下はどうしても苦しい。五枚で4勝計算しないといけない。次からはもっと苦しくなる」

「なんで俺にその話を?」

「もちろん君が将来、この役割をするから。僕も一年の時から覚悟していたよ。だから、かなり研究した」

 覚田の学年には、野村というエース候補がいた。対する覚田は初心者で入部。当初は他にも何人か、経験者の同級生がいた。覚田は、将棋の力では皆に追いつくのは難しい、と感じていた。そして、自分以外は部長に向かない、ということも分かっていたのだ。

「対局でも作戦でも頑張らなきゃいけないのは大変だよね。でも君には、そうする理由があるから」

「はい。もちろん頑張ります」

 二人は、対局のある部屋に戻った。そして対戦表を見るなり、覚田は唇をかんだ。しかし彼もまたプレイヤー、できるだけ普通の表情を作って、五将の席に座った。

 二回戦の相手は、工業大学。層は薄いものの、スーパーエースと呼べる二枚看板を備えたチームである。そして二回戦ゆえに、大胆な作戦をとることができた。上から二枚、当て馬にしてきたのである。

 野村をスーパーエースでつぶす作戦は、どのチームも考えることだろう。それに加え、一回戦で強豪に勝った中野田がマークされ、二枚めの看板を当てられた。さらにはポイントゲッターを的確に六、七将に配置された。

 工大の作戦は、見事に決まった。昨年までの県立大ならば、相手のスーパーエースに勝てる人間が4人もいた。しかし今の野村・中野田には、まだそこまでの力はない。もし一発入れられるとしたら蓮真だけ。つまり蓮真が大将の時点で、県立大の負けは濃厚だったのである。

 覚田は勝ったものの、的確に三・四・六・七を獲られてしまった。県立大学は、2連敗となった。



2回戦

県立大学 3-4 工業大学

佐谷(一)〇

夏島(四)〇

野村(三)×

中野田(一)×

覚田〇(三)

北陽×(二)

安藤×(一)


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