【1回戦】
連休初日。地区大会、団体戦が始まった。
A級の参加校は8校。二日間かけて総当たりし、優勝した学校が全国大会への切符を得る。
前年度優勝校の県立大は、順位が下だったチームから順に当たっていく。コンディションを整えていく、メンバーの状況を知るなどの側面からも、有利な当たり順である。
ただし、初戦の
前年度、全国大会で旋風をまき起こした県立大学の初戦。本来ならば大きな注目が集まるはずである。しかし、チームが会場入りした時から、他チームのマークはほぼ外れていた。
「やっぱり、ビッグ4全員卒業したんだ」
「大量に部員辞めたの、本当だったんだな」
「8人しかいないじゃん」
影で、いろいろと言われていた。そしてそれは、覚田の予想通りの反応だった。
「まあ、だれでもそう思うよね」
昨年から残ったのはたったの四人。半分が一年生のチームは、全国二位とは全く別のチームといってよかった。
開会式が終わり、いよいよ一回戦が始まった。大将席に着くのは、一年生の蓮真。それに四年生の夏島、エースと目される野村が続くオーダーである。
団体戦における一回戦は、二回戦以降とは戦い方が違ってくる。相手チームのオーダーがまったく分からないので、出たとこ勝負という面があるのだ。また、チームが何を狙っているか、ということでもオーダーは変わってくる。優勝を目指すならば上位チームに一発入れられる編成にしなければならないし、順位を上げたいならば取りこぼしの少なくなる並びにする必要がある。
孝生学園は、オーソドックスに組んできた。強い選手を副将から四将に並べていた。相手によってはその間に書いた選手を入れ、当たりをずらす作戦だ。大将にエースを置くと、作戦の幅が狭まる。かと言って勝ち数で順位が決まることもあるので、いきなりここに当て馬も使いにくい。そんなわけで蓮真の相手は、ポイントゲッターとなった。「相手が弱ければ確実に勝つ」という役回りの選手である。
そしてこれらは、すべて覚田の読み通りだった。
初めての大学団体戦、初めての七人制だったが、蓮真は気負うことなく指していた。相手がそれほど強くないのは、すぐに感じ取れた。そして大将は、片側しかチームメイトがいない。両側に必死になるチームメイトがいるのとは、プレッシャーが違う。そして副将の夏島は、序盤巧者だった。隣が劣勢になっていないというのも、団体戦においては重要な要素である。これも、覚田の計算のうちだった。
蓮真の手が、どんどん伸びる。チームの中で、最初に勝利した。
ふっと安どの息を吐く蓮真。しかし、壁に張り出された対戦表を見て、顔を曇らせた。すでに、チームに×が2つ付けられていたのである。
六将北陽、七将安藤。下の二人は、早々と吹っ飛ばされていた。層の厚さが違うと、どうしてもこういうことは起こってしまう。
対局が終われば、あとは仲間を見守るしかない。三将野村が、見事に勝ち切った。五将覚田は、押し切られた。これで、2勝3敗。そして中野田が、苦しい局面から逆転して勝った。終わるなり、蓮真に視線を送った。
残ったのは副将戦。ここで、勝負は決まる。長い戦いが続いた。電子時計の音が、幾度も繰り返された。そして。
「負けました」
頭を下げたのは、夏島のほうだった。
大会8連覇、全国2位の県立大は、初戦で痛い黒星となった。
1回戦
県立大学 3-4 孝生学園
佐谷(一)〇
夏島(四)×
野村(三)〇
中野田(一)〇
覚田(三)×
北陽(二)×
安藤(一)×
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