第12話 執事見習いの仕事2
灯りの着いたランタンを片手にラックは屋内の見回りを始める。
窓の戸締り、備蓄室や物置の中の確認。見回りの中で一番大変なのは備蓄室の管理だ。
使用人だけでもかなりの人数がいるグレイス家は備蓄室に保存されている食料の在庫を毎日管理しないといけない。
特に在庫が心許なくなってきたものに関してはこれまた見習いが確認をして上に報告。そして街へと買い出しに出かける。
地味な作業でもあり、グレイス家の人々の為に働いている実感はハッキリ言ってあまり感じられないのだが、ここで行った経験が後々グレイス家の人々の使用する物の管理や仕事に繋がるのだ。
ようは本番前の予行練習が使用人見習いの仕事の本分であるといえる。
そんな考えをしながらチェックを進めていく。
チェックを行うのは魔術板。魔力を通すと文字を書記すことが出来るメモ帳のようなものだ。室内に置かれたこれを使用して日々在庫を確認する。
確認した結果、野菜と肉類の在庫が少なくなってきていた。
在庫のチェックを終えると朝日が顔を覗かせていた。それに伴い使用人たちが続々と室内から顔を出し始めていた。
執事長であるクロードは既にほかの使用人たちについて今日の予定などについて各担当に指示を出していた。
ラックはクロードの周りから人がいなくなるのを見計らい、備蓄室の在庫についていつものように執事長へ報告を行った。
「クロード執事長、今日の記録です」
「ご苦労さまです、ラック。ふむ、この量だと街へ買い出しに出かけてもらう必要がありそうですね。
市がそろそろ開くでしょうから後でヘックスからお金を受け取って材料を買いに出てください」
「わかりました」
「今日の修練に関しては夜に回します。買い出しが終わったあとはいつものようにアルバート様の傍に控えるように」
「はい。では、失礼します」
報告を終え、その場を後にするラック。市場への買い物へ向かうために金庫番であるヘックスの元へと歩いていく。
道中、窓から見える屋敷の庭には、使用人たちと同じように早々と起床をしたセラの姿が見えた。
真剣な眼差しで木剣を手に持ち、素振りをするセラに思わずラックは目を奪われた。
転生したけど推しがいない! くうかい @kuukai
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