第9話 敗因と勝因
ケーニッヒからの突然の問いかけにサラだけでなく広間にいた人々は驚いた。
パッと見たところケーニッヒの様子は競技に負けたことに対する悔しさといったものが見られない。
もしかしたら今回の敗北を次に活かすために敢えて心情を隠して、勝者であるグレイス家のとった作戦や勝因を分析しようという目論見もおそらくはあるのだろう。
先に先程まで行われた競技に関して口にしたレグルスはしまったと苦い顔をしている。自分から話を持ち出した以上表立ってケーニッヒの持ち出したグレイス家の勝利の分析を止めることが出来ないからだ。
「とりあえずサラ。復習がてら今回の競技はどんな内容だったかを説明してもらえるかな?」
「はい、お父様。今回の競技は雪玉を使ったフラッグ倒しでした。
両陣営に設置されたフラッグを雪玉を使って倒す。それだけです。
ただし 〝妨害〟に関してのルールはありませんでした」
「そうだね、フラッグ自体はそれなりの速度と威力で固めた雪玉を投げれば倒れる程度の固定だったね。
妨害に関してのルールがないということは、つまり競技に参加している相手を妨害という名目で倒してからフラッグを倒すのもルールには反していないということ」
「実際、両陣営の子供たちはそれを第一にして動いてたわね」
夫の言葉に続いてミリアナが観戦していた競技の感想を述べた。
「競技に関してはルール等毎回事前に通達があるからね
ただし提示されたルールを元に作戦立てるのは実際に競技の参加者だ。
今回両家の若手が五名選ばれて参加したわけだけど、グレイス家としては勝つための要因として何に一番重きを置いていたのかな?」
ケーニッヒは笑みを崩さぬままアルバートへと視線を移した。
それに対してアルバートは僅かに悩んだ素振りを見せたあと答えを提示した。
「そうですね、今回のこちらの出方としては、ルファス家のセラの足止めに力を入れさせてもらいました。
正直ここ最近のルファス家との競技での敗因の一番大きな要素は彼女でしたから」
「なるほど。確かにセラの才覚は昨年の気力の発現以降目覚ましいものがあったからね。
実際これまでの競技で我が家が勝利を収められたのも彼女の力が大きかった
だが、そうなると一つ疑問が湧いてくる
今回そんな活躍と成長が目覚しい彼女を見事に妨害してみせた相手についてだ」
ケーニッヒはそう口にして僅かに視線を細め、壁際に控えて同僚であり先輩でもある使用人たちの仕事ぶりに目を向けていたラックを注視するのであった。
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