第6話 決意を胸に
ラックとセラのやり取りによって期せずして和んだ雰囲気を見せるアルバートとサラ。
そんな二人の様子を見てラックも思わず笑みを浮かべる。
(ああ……これが将来の二人の在るべき姿か)
まだ幼く、自分が知っている仲睦まじいという設定の「マリー」の両親としての姿の一端を垣間見たような気がしてラックは胸の内が暖かくなるのを感じた。
同時に、とある決意もまた彼の内に生まれた。
それは、転生してなお消えない熱い思い。推しに会いたいという強い気持ちだった。
それを成すためにも、スターライトプリンセスの設定通りに将来的にはアルバートとサラには結婚してもらわないといけない。
今は険悪な両家、というよりは2人の架け橋となるべく、ラックは二人がくっつくためならばどんな困難な出来事が待ち受けていようと手助けになろうとこの時決意をしたのだった。
密かに将来に向けての決意をラックが己に課していると、子供たちの笑い声に釣られたのか部屋の前にひっそりと一人の老紳士が立っていた。
きっと、楽しく過ごしている子供たちの空気を壊すまいと気配を消して様子を見守っていたのだろう。
その老紳士は柔和な笑みを浮かべながら、子供たちが作り出した楽しい空間に水を差すことに対して申し訳なさそうにしながら、頼まれていたであろう言伝を口にした。
「皆様、ご歓談の最中に申し訳ありません。
昼食の準備が整いましたので、宜しければ広間へお越しください。
それと、ラック。体調はもう大丈夫ですか? 業務に支障があるようであれば本日はこのまま休んでいても構いませんよ」
老紳士からの問いかけにラックはすぐさま返事をする。気持ちは先程までの浮ついたものから一瞬にして切り替わっていた。
幼いながらも執事見習いとして日々を過ごしてる結果だろう。
「問題ありません、クロード執事長。
既に充分すぎるほど休養をいただきました」
「宜しい。では、貴方はアルバート様、サラ様、セラ様を広間へとご案内しなさい」
「かしこまりました」
「では、皆様。
若輩者ですが皆様のご案内を執事見習いのラックが行わせていただきます。
私は申し訳ありませんが他の要件がございますので、これにてこの場を後にさせていただきたいと思います」
その後をラックへと託したクロードは恭しくアルバート達へと礼をすると、静かにその場を後にした。
そうして残された四人であったが、先程までの和やかな雰囲気は既に薄れていた。
対立する両家の立場を思い出したのか、どことなく硬い空気が周囲には漂っていた。
先は長いなぁ……と心の中でため息を吐き出しながらラックはアルバートと達を広間へと案内するのであった。
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