第89話 ランク昇格
魔獣を操る針の一件が片付いて一週間が経過しようとしていた。
あれから、新たな針の刺さった魔獣が討伐されたという報告は受けて居ない。
魔人族の女を倒したことにより一件落着といった所なのであろう。
そしてまた、今日はギルド本部へと呼び出されて居た。
アリアとシャルも一緒だ。
「お待たせしました」
樹たちはギルドマスター室へと通されるとギルマスの対面に座った。
「それで、今日はどういったご用件ですか?」
樹が切り出した。
「ああ、それはだな。シャル君のランクを今のCランクからAランクへ昇格させようと思ってだな。これ、推薦状だ」
ギルマスは樹たちの前に一枚の紙を置いた。
「拝見します」
樹が紙を手に取り内容を確認する。
そこには、国王陛下、公爵、ギルドマスターのサインと共に、Aランクへの昇格の旨が書かれていた。
「Bランクを飛ばしての昇格となるが、その辺は問題ないだろう。なにせ、魔人族の件や人身売買組織の件といい十分すぎるほどの働きをしてくれたからな」
ランクを一つ飛ばしての昇格は異例のことであるが、前例がない訳ではない。
何せ、ここにいる樹は初めての冒険者登録でいきなりAランクを叩き出した男だ。
「おめでとう。良かったな」
「おめでとうございます」
樹とアリアはシャルに言った。
「あ、ありがとうございます。恐縮です」
「それでだな、ここに樹くんのサインも貰えないだろうか」
そう言ってギルマスは樹にペンを渡してきた。
「え、何故俺のサインも必要なんです?」
「実は、ランクの特別昇格には推薦人が四人必要でな。それも、ある程度地位のある者でなければならん。魔術学院の学院長なら推薦人としてもふさわしいだろう」
「そういうことでしたら喜んで書きますよ」
樹はギルマスから受けとったペンで綺麗にサインをした。
「これでいいですか?」
「ああ、問題無い。それじゃあ、シャル君の冒険者カードを貸してくれるかな?」
「は、はい」
シャルはポケットに仕舞っていた冒険者カードを取り出すとギルマスに渡した。
「じゃあ、ちょっと預かるぞ」
そう言うとギルマスは一度部屋を出て行った。
数分後、ギルマスが再び部屋に入ってきた。
「これがシャル君の新しい冒険者カードになる」
ブロンズのカードからゴールドのカードへと変わっていた。
それによりステータスも更新されているようであった。
《ステータス》
名前 :シャル
年齢 :19
レベル:62
種族 :エルフ族
スキル:弓術、小太刀術、護身術
魔法 :火、水、風、光
称号 :エルフの里長老の娘、綾瀬樹の弟子、アリアの弟子、弓術を極めし者
シャルは更新された冒険者カードを嬉しそうに見つめていた。
「これでもう、シャルは立派な冒険者だな」
そう言って樹はシャルの頭をそっと撫でた。
自分の育てた弟子が育っていくのはこんなにも嬉しいものなのかとしみじみと感じる樹とアリアであった。
「これからもよろしく頼むぞ」
「「「はい」」」
ギルマスとの話も終わり、樹たち一行はギルド本部を後にするのであった。
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