第88話 魔人族の策略
樹は魔人族の女と対峙していた。
年齢は人間でいうと20代後半。
普通に美人と言える顔立ちの女だ。
「くっ、この私が反応出来ないなんて……」
「忠告はしたはずだ。痛い目をみたく無ければ辞めておけとな」
『炎柱』
女は上級魔法である炎の柱を樹に向かって放った。
樹はそれを躱す素振りは見せなかった。
樹が手を前に突き出すとシルフィルの精霊術により、炎の柱間を丸ごと包み込んで収束させてしまった。
「じょ、上級魔法が意味をなさないなんて、アンタ人間かい?」
「さぁな。そいつは俺が知りたいくらいだよ。さて、お遊びはここまでだ」
『風槍』
シルフィルの力によって強化された風魔法を魔人族の女の足に向かって放った。
「う、あぁぁぁぁ」
悲鳴と共に女は足をついて倒れた込んだ。
「さて、話してもらおうか。何故魔獣を操っていた?」
「い、言う訳……無いだろ……」
「そうか。言いたくないか」
『風刃』
もう一度、今度は風の刃を女の腕に放った。
「あぁぁぁぁぁ」
更に大きな悲鳴を上げた。
「言う気になったか?」
「誰が言うもんか……」
「そうか。まあいい。おおよその見当はついてるしな」
「なん、だと……」
魔人族の女は少し頭を上げた。
「魔獣どもを支配、強化して魔獣の大群を率いて王都に攻め込もうって算段だろ」
女は少し目を逸らした。
「図星か」
「しら……ない……」
「まぁいいさ、どうせお前にはここで消えてもらうからな」
その言葉に女は目を丸くした。
「私を殺すってのかい?」
「ああ」
「私を殺したら私の彼が貴女を追いかけるわよ」
「知った事か。敵意には敵意で返す。俺に刃を向けたらどの道ただじゃ帰れない」
樹は黒い笑みを浮かべた。
後ろにはただ呆然としているアリアたちが居るのだが。
「ほんじゃ、さいなら」
『風槍』
風の槍が女の心臓に突き刺さった。
その刹那、魔人族の女は絶命したのであった。
「あぁ、終わった終わった。帰ろうぜ」
後ろで立っていりアリアたちに声をかけた。
「ま、まるで出番がありませんでした」
「お怪我されてませんか?」
「強すぎだぜマスター」
「あぁ、俺なら平気だぜ。ほら」
樹は軽く動いて見せた。
「にしても、ここは埃っぽくていかん。さっさと出ようぜ」
「そうですね」
転移魔法を展開すると迷宮の外へと出た。
ちなみに開けた穴はきちんと戻しておいたよ。
「あ、迷宮なら攻略しちまったかよろしくー」
「あ、はい、え!?」
外の騎士にその事を伝えると随分と驚かれたが、俺ならやりかねないとの結論で終わった。
そして樹たち一行は報告の為に王都へと戻る。
「ほう、魔人族の女がいたのか」
「はい、殺しちゃいましたけど」
「王都へ攻め込まれる前に討伐出来たのなら文句は言われるまい。後の事はこっちで処理しておく」
「よろしくお願いします」
報告を済ませてギルド本部を後にすると屋敷へと戻るのであった。
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