第31話 元エルフの里へ
樹とアリアは屋敷へと戻ってきた。
「という訳で明日からまたしばらく屋敷を留守にすることになる。頼めるか?」
家令のセザールに事情を説明した。
「もちろんでございます。屋敷は私どもが責任をもってお守り致します」
「ありがとう。頼りにしてるぜ」
その時、近くにいたシャルがどこか暗い表情をしたのが目に入った。
「シャル、どうかしたか?」
「あの、元エルフの里に行くというお話でしたが、私も連れて行っては頂けないでしょうか?」
「申し訳ないがそれは出来ない。危険すぎる」
「でも!」
「シャルはしっかりこの屋敷を守っていてくれ。シャルがもっと強くなったら連れて行ってやる。そうだ、帰ったら稽古をつけてやるよ」
「本当ですか!?」
「ああ、約束だ。だから、今回は我慢してくれ」
「はい、わかりました」
「分かってくれてありがとう」
樹はそっとシャルの頭を撫でた。
「さて、飯食って風呂入ったら寝るか」
樹は食事と入浴を済ませるとベッドに潜り込み、やがて意識を手放した。
翌朝、目覚めると冒険者の装いへと着替え、朝食を取ろうと階段を降りた。
「おはよう」
「おはようございます。樹さま」
「朝ごはん出来てる?」
「はい、ご用意してあります」
「いつも助かるよ。じゃあ、一緒に食べよっか」
樹はアリアと共に朝食を取った。
「元エルフの里かぁ。行ったことないから馬車で行くしかないよな」
「そうですね」
転移魔法は一度行ったことのある場所にしか転移できないため、今回は使えないのだ。
仕方ないので今回は綾瀬家の馬車を使うこととした。
馬車の側面には陛下から頂いた家紋が描かれている。
ここから元エルフの里には馬車で3時間かから4時間といったところであろう。
「さて、行くか」
樹とアリアは馬車に乗りこんだ。
最初はアリアが御者を務める。
半分ほど行ったら交代するつもりだ。
「行ってらっしゃいませ」
「お気をつけて下さいね」
セザールとシャルに見送られ、樹たちは屋敷を出発した。
豪華とまでは行かないがそれなりに装飾された馬車は貴族用の門から王都を出ることが出来る。
樹は貴族ではないが、Sランク冒険者、それも二人となれば、国政にも意見出来るほどの力となる。
一時間半ほど移動しただろうか。
特に問題無く進んでいた。
「アリア、そろそろ御者、交代するよ」
「いえ、樹さまに馬を扱わせるなんて」
「いいからいいから、せっかく馬を扱える人間が二人いるんだから交代していかなきゃ。アリアもちょっとは休んでね」
「で、では、お言葉に甘えて」
樹はアリアと御者を交代した。
魔物や盗賊が少ないルートを通ると少し時間はかかるが比較的安全に進むことが出来た。
ちなみに途中、現れた低レベルの魔物はアリアの弾丸の餌食となった。
あれから2時間弱が経過したであろう。
ようやく元エルフの里へと到着した。
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