第10話 二人の最強冒険者

 翌日、アリアのギルドカードが完成したということで、樹とアリアはギルドへと歩みを進めた。


「冒険者なんてもうしないと思っておりましたのに、旦那様と出会って色々と変わりましたわ」

「その、旦那様って辞めないか、これからは一緒に冒険したりするわけだし」

「そ、そういう訳には参りません。では、せめて樹さまとお呼びさせて頂きます」

「あ、うん、それでいいよ」


 アリアとも段々と打ち解けてきた気がする。

まあ、関係性は主人とメイドというままなのだが、それがいい。


「よし、着いたぞ」


 二人はギルドへと足を踏み入れた。


「あ、アリアさんのギルドカード出来てますよ」


 樹たちに気づいたメラニさんが声をかけてきた。


「ありがとうございます」


 アリアは樹と同じく、プラチナに輝くギルドへカードを受け取り、メイド服のポケットへと仕舞った。


 とりあえず、帰ろうかと思った二人だったが、ギルドマスターに呼び止められた。


「樹とアリアよ、ちょっといいかね?」

「は、はい、構いませんが」

「なら、ちょっと、ギルドマスター室まで来てくれ」


 ギルマスに促され、ソファーに腰を下ろした。


「いやぁ、アリア殿の冒険者復活はとても嬉しく思うぞ。今までソロだった樹にもパートナーが出来たわけだしな」


 そう言ってギルドマスターは豪快に笑う。


「はい、僕もパーティを組むつもりはなかったんですけどね。アリアならと思いまして」

「そうかね、それは何よりだ」

「それで、用件というのは?」

「ああ、これを見てくれ」


 ギルマスは机の上から一枚の依頼書を手に取り、樹とアリアの前に置いた。


「これは?」

「違法人身売買組織のメンバーリストとアジトの場所だ。こいつらを一掃してきて欲しい」

「なるほど。でも、何で俺たちに回ってくるんですか?」


 普通、この手の依頼はBランク以上の冒険者なら任せられるはずだ。


「それがな、こいつらはちょいと危険な奴らでな。腕の立つ冒険者に頼みたいのだよ」

「危険といいますと?」

「外道魔術師や裏ルートから武器を大量に入手しているとのことだ」

「なるほどな」


 樹はアリアの方をチラッと見た。


「私は、樹さまがよろしければ異論はございません」

「よし、分かった。その依頼受けるよ」

「ありがとう。助かるよ」


 樹はギルマスから依頼書を受け取った。

報酬は金貨で12枚、悪くない仕事だ。


「それから、お前さんたちのパーティ登録をしよう。リーダーは樹で構わないか?」

「ああ、それで頼む」

「分かった」


 そう言うと、ギルマス直々に手続きをしてくれた。


「パーティ名は『漆黒』とでもしておこう」


 何やらパーティ名が勝手に決まった。


「漆黒って、何でだよ」

「お前さんほ服も髪も瞳も黒いからだ」

「そのままかい!」


 樹は思わず突っ込んでしまった。


「まあ、よいではありませんか。漆黒、カッコイイですよ」


 アリアが優しく微笑んだ。

まあ、アリアが気に入ったのならそれでいいのだが。


「ステータスボードを開いてみろ。そこに所属パーティが表示されているな?」

「ああ、されているよ」

「私もです」


 ステータスボードには所属パーティ『漆黒』の表記が追記されていた。

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