第11話 アリアと樹の戦闘術

 ギルドマスター室から出るとさっそく依頼をこなそうということで話はまとまった。


「ところで、アリアは武器とか持ってないみたいだけど、大丈夫なの?」

「いえ、私にはこれがありますから」


 そう言うとくるぶしまであるスカートを太ももまでたくし上げた。


「え、ちょ、何してんの!?」

「あの、ここに私の武器があります」


 そう言われて、アリアの方を向くと両太ももにリボルバータイプの銃が仕込まれていた。

弾丸は魔力が込められており、通常の弾丸より遥かに威力が高く、自動装填になっているそうだ。


「へぇ、銃か。確かに、スキルに射撃術があったもんな」

「はい、私はこれが一番気に入っております。ところで、樹さんの武器は……?」

「あ、俺の? 俺のはこれだよ」


 そう言って樹はストレージから日本刀を取り出した。

この日本刀は武器職人の中でも限られた者しか作ることが出来ない。

色々な店を探し回って、ようやく手に入れた代物だ。


「え!?」

「ん? どうかしたの?」

「い、いえ、職業が賢者なので、てっきり魔法の杖の類かと思っていたので」

「ああ、魔法なんて杖なんか無くたって無詠唱で打てるからな。物理攻撃の武器の方がよっぽど使えるよ」


 樹はそう言って笑った。


「それと、アリアはその服装のまま戦うの?」

「ええ、もちろん。メイドですから。それに、これはただのメイド服じゃないんですよ」


 アリアのメイド服は特注品で防刃防弾加工に魔法耐性まで付いている一級品なのだ。


「なんじゃそれ、俺のコートより強いかも……」


 樹のコートは自分の魔力の増加と敵の全属性魔法の威力軽減してくれる、というものだった。

これはこれで、かなりの高性能なものなのだが。


「それでしたら、私のと似たようなものですよ」


 そう言ってアリアは優しく微笑んだ。

そうこう話しながら二人はギルドを出た。



「おい、お前ら、ちょっと待てよ」


 樹たちのことを呼び止めているのだろうと分かったいたが、二人は無視して進もうとしていた。


「おい、待てって言っているのが聞こえないのか?」


 すると、樹とアリアの前にスキンヘッドで大剣を背負っているヤツと髭面で筋肉がムキムキの男が阻んできた。


「何の用だ?」

「お前、メイドを連れてるっていう事はどっかの貴族だろ? 貴族に冒険者なんて務まるかね。俺たちが教育してやるよ。その代わり金とその女をちょいと貸してもらおうか」


 男たちはニヤニヤとした気色の悪い笑みを浮かべた。

周りには他の冒険者たちも多く居る。

その冒険者たちからは男二人に憐れみの目を向けていた。


「お前ら、俺たちの事を知らないのか?」

「はぁ、なんだその目は」


 アリアのことはともかく、樹のことも知らないとなると地方の街から最近王都にやって来たのだろう。


「お前ら、絡む相手、間違えたよ」

「なんだと貴様! おい、こんなガキやっちまうぞ」


 スキンヘッドの男は大剣を向け、髭面な男はガントレットを装着した。


「おい、アリアどっちやる?」

「じゃあ、近い方で」


 アリアはガントレットの男の方を指した。


「了解」

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