第9話 再冒険者登録

 ノックの後、入っていいと許可すると、アリアが入ってきた。


「お時間を頂き、ありがとうございます」

「いや、気にしなくていい。どうかしたか?」

「あの、昨日お話した旦那様と冒険者をするというお話ですが、」

「ああ、決心できたの?」

「私、もう一度冒険者やってみようと思います!」


 そう言ってアリアが意気込んだ。


「そうか、俺とパーティを組んでくれるのか。ありがとう」

「はい、セザールさんにも相談したのですが、背中を押してくださいました」


 セザールも応援してくれているなら何の問題もないだろう。

陛下の許可も得ていることだしな。


「それで、私は一度、冒険者ギルドを脱退しておりますので、再冒険者登録をする必要がございます」

「なるほど、じゃあ、さっそく今日にでもギルドに行くか」

「はい、そうしたいと思います。あと、私が旦那様と冒険することになると、屋敷を留守にすることも増えると思います」

「あ、そう言われたらそうかもな」

「ですので、私の代わりのメイドをもう一人雇ってはいかがでしょうか」

「うん、そうすることにするね」

「では、午後からギルドに行くということでいかがでしょうか?」

「うん、それで構わないよ」


 アリアが部屋を後にすると、外出用のコートを出した。


 昼食を済ますと、アリアと共に屋敷からギルドまでの道のりを歩いた。


「外出る時もその恰好なんだな」


 アリアは相変わらずのメイド服姿だった。


「私は旦那様のメイドですから常にこの服装ですが、ご不満ですか?」

「いや、構わないよ。その服装、割と好きだからな」


 樹は割とメイド好きなのだ。


 そうこうしているうちに冒険者ギルドに到着した。


「おお、相変わらず人が多いな」

「はい、そうですね」


 そして、樹たちはギルドへと入った。

ギルドに入ると、視線が樹とアリアに向けられた。


「なんか、凄く見られてないか」

「気にしてはいけません。さあ、行きましょう」


 元Sランク女性冒険者と現役のSランク冒険者が揃って顔を出したらそりゃ、視線も集めるだろう。


「あ、メラニさん、アリアに再冒険者登録させたいのですけど、ここでいいかな?」


 樹は顔見知りのギルドの受付嬢に声をかけた。


「樹さん、お久しぶりです! ええ、ここで構いませんよ」

「ああ、久しぶり。じゃあ、お願いするよ」

「は、はい。アリアさんは何ランクの冒険者でしたか?」

「あ、えっと、Sランクですけど」


 アリアが普通の顔で答えた。


「え、Sランクですか!? やっぱり、どこかで見た顔だと思ったらあのアリアさんでしたか! ちょっとギルマス呼んできます」


 メラニさんはギルドマスター室に走った。


「お、お待たせしました。こちらにお願いします」


 樹とアリアはギルドマスター室に通された。


「樹くん、今回の再冒険者登録は異例のため、ここに来てもらった。まあ、座ってくれ」

「はあ、異例ですか」


 そう言って樹とアリアはギルマスの対面のソファーに腰を下ろした。


「今まで、Sランクの再冒険者登録は行われておらんかったからの。今回は特別に元のランクのまま再登録してやろう」


 本来、再登録の場合は元のランクから一個下がったランクからのスタートになるのだ。


「いいんですか?」

「いいんじゃよ。ソロのお前さんがパーティを組む相手が元Sランク冒険者というのも面白いじゃないか」


 ギルドマスターは優しく笑った。


「明日にでもギルドカードを発行するから、また明日来てくれ」

「分かりました」

「かしこまりました」


 こうしてアリアの再冒険者登録が決まった。

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