第8話 異世界での生活
その日の夕食はイノシシ肉のステーキと野菜サラダにトマトジュースだった。
イノシシ肉はあまり美味しいイメージが無かったのだが、この世界のイノシシ肉は凄くおいしかった。
「これ、凄く美味いよ」
「光栄でございます」
屋敷の料理人が頭を下げた。
夕食を食べ終わると、樹は風呂に入ることにした。
「ああ、日本人としてはやっぱ風呂だよなぁ」
この世界では風呂が家に付いているのは上流階級の貴族か商人のみだった。
一般庶民は水浴びや、濡らしたタオルで体を拭くくらいだった。
「気持ちいい」
樹は広い湯舟にのびのびと浸かっていた。
「お背中、お流しします」
そう言ってバスタオル一枚姿のアリアが入ってきた。
「ア、アリア!? 何してんの!?」
「旦那様のお背中を……」
「い、いいから、大丈夫だから! 自分でできるから!」
「しかし、」
「しかしじゃありません。大丈夫です」
「そうですか……」
アリアは渋々戻っていった。
「ふう、なんだったんだよ。さて、そろそろ出るか」
樹は風呂を上がると用意されていたパジャマに着替えた。
「今日はもう、休むとするか」
自分の部屋へ入るとベッドに倒れ込んで、やがて意識を手放した。
翌朝、部屋をノックする音で目が覚めた。
「旦那様、朝食の準備が出来ましたよ」
セザールが朝の8時ちょうどに起こしに来た。
「うん、今行く」
樹はパジャマから普段着ている、黒のシャツに黒のパンツの冒険者スタイルに着替えた。
冒険に出る時はこの上に黒地にシルバーのラインが入ったコートを着ている。
朝食はハムサンドとブラックコーヒーというシンプルなものだったが、これがまた最高に美味かった。
「砂糖とミルクはどうなさいますか?」
「ブラックのままで構わないよ」
「かしこまりました」
そう言って屋敷の料理人が一歩引いた所に立っていた。
「うん、一人で食事するのもなんだか寂しいな。ねえ、明日から使用人のみんなも一緒にご飯食べることにしよう」
そう、樹が提案した。
「え、本当によろしいのですか?」
セザールもアリアも驚いた顔をしていた。
「だって、一人で食べるより、皆で食べたほうが美味しいじゃない。え、駄目なの?」
「いえ、駄目ということはありませんが、使用人は普通、主人が食事しているときは立って見ているものかと」
「見られてるのも落ち着かないし、皆で食べる、決定!」
こうして、半ば強引にこの屋敷の主権限でみんなで食事をすることが決定した。
「あの、旦那様、食事の後、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
アリアが声をかけてきた。
「ああ、構わないよ。後で俺の部屋まで来てくれ」
「かしこまりました。ありがとうございます」
食事の後、部屋に戻ると間もなくして、部屋をノックする音がした。
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