第2話 上里中学剣道部。<後編>


パン。パチン。竹刀の打ち合う音がする。一試合3分間の二本勝負、時間はどれくらいたったかわからないが、相手の面をくぐり抜けて胴に1本入れた僕が明らかに優勢であろう。


ピッーーー。ブザー音

「やめ。」

主審しゅしんの声が聞こえる、これは1本先取で僕の勝ちだろう。

心の中で喜ぶ、確実に練習の成果が出ている。


頑張れよと次の佐藤の背中を叩く。

それからは皆一進一退の戦いが繰り広げられていた。


佐藤は二本取られて負けてしまった。


大杉が一本取替えしそのまま勝利した。


奈良は相手と引き分けだった。


そして勝敗は全て、部長の星野にかかっているのだった。


始まった試合、開始直後電光石火のスピードで一本先取された。明らかに狙われるていたのであろう。開始早々にもう後が無い状況になってしまった。

深呼吸をする、星野。落ち着きを取り戻したのだろか。

始まった直後、取られた一本を取り返すが如く。星野も相手の面に強烈な一本を叩きこんだ。この二本の取り合いまで試合時間として、約10秒もかかっていないであろう。


試合時間も終盤に差し掛かった頃、星野が動いた面を狙っている。相手もそれに気が付いたのか即座に、面に向かって竹刀を伸ばした。

パチン。会場に広がる二人の合面の音。副審ふくしん二人がお互いに判定の旗を上げる。

互角のようだ。最後は主審の判断だ。


上がった旗は・・・・・・・・・・・・星野一本だった。


そのままギリギリ勝利した僕ら。


昼飯を挟みながら、話をしていた。


「確実に成長してるよね。」


「このままいけば、県大会もいけるかも。」


「最後まだ気を引き締めていかないと、感じなところで足をすくわれるぞ。」


口々に話す僕ら、みんなも確実に成長している実感があるみたいだった。


僕らは自信がついたのか怒涛の快進撃で、2回戦3回戦を確実に突破していった。


4回戦目遂に快進中との決戦だ。これに勝てば県大会出場僕たちの想いはただ一つ。


始まった試合。結果はぼろ負けだった。何本か奪うことはできたものの、完敗だった。悔しい思いが残ると思ったが不思議と心地良さが残った。それはこのメンバーで最後までやりきれたからであろう。そのまま最後の試合は幕を閉じた。


それからしばらく転校の準備で部活に行けない日々が多くなった。夏休み、最終日クラスの友達や、学校の先生皆に寄せ書きを貰った。悲しい別れをして最後に体育館へ向かう。


そこには、剣道部の皆がいた。


「ほら、これやるよ。大事にしろよな。」

そこには、新しい竹刀と寄せ書きがあった。


「転校したら全員ぶちのめしてこい。」by剣道部一同

そこには、あの日最後という事で撮った写真が貼り付けられていた。


目から汗が流れてきた。


「何、泣いんだよ。」


「違うは、暑くて目から汗が出てるんだよ。お前らだって・・・・」


「じゃあな。」


「みんな、ありがとう。」


「て、言う話が昔あったんだよ。」

あれから半年後僕は転校し、その学校で剣道部に入部した。今は明日の春の大会に向けてのミーティング中だ。


「へーそんなことがあったんだな、皆仲良かったんだな。俺的にはあの時負けた、大将戦でリベンジしたい。」


「だけど、今年はもう違う敵だ。僕には新しい仲間がいる上里中には負けない。絶対的に勝って県大会出場しようぜ。」


「なら、明日の初戦は絶対負けられないな。俺も頑張らなきゃな。」


「僕に負けたくせに、」


「ああ、何だてめーえ。今やるかボケ!」

そんなやり取りを無視して、オーダー表を見る。


「まさか、夏も春も1回戦で当たるとはな。」

運命のいたずらなのか、それともくじ運が良かったのかそんなものはわからない。だがしかし一つ言えることは、僕たちは負けないであろうこれだけだ。新しい仲間と挑戦する、初めての公式戦。


「両校同時に礼。」

今の仲間、かつての仲間が同時に頭を下げる。


僕はこの学校でも先鋒だった。相手は矢崎か、僕の代わりに先鋒になったのか。

かつての友と対峙する。


両校が向かい合い対峙する。この1回戦は絶対に負けられない、先鋒とは勝って流れを掴むものだ。



「初めっっ!」



その合図とともに僕はかつての仲間目の前の相手から貰ったこの手の竹刀でおもいっきり切りかかるのだった。

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見せろ最高の1本!弱小剣道部の成り上がり。 霜月晴人 @haretan

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