第12話目の前の現実

「じゃあ行くぞ!俺とナイトで先頭を進むからお前たちは後ろから付いてきてくれ」


 直弥なおやの呼びかけに頷く生徒たち、それを確認して俺はナイトと共に教室を出て真っ直ぐにすぐそこにある階段へ向かった。


 改めて外に出ると廊下一面に広がる血の海や死骸そして鼻につく血の匂い。正直吐き気を催していないと言えばうそになる、クラスメイトの何人かも廊下の現状を見て吐いている。ただ一度この場を見たということとナイトたちがいるっという安心感からか不思議と落ち着いている。


 ゆっくりと足場を確認しながら進んでいく一行。足場が血や肉片などで不安定で少しでも油断すれば足を取られてコケる可能性があるためだ。


「血生臭いしきたねぇ~し本っ当に嫌気がさす。」

「デラク文句を言うのはやめなさい。マスターからの命令ですしっかり守りますよ」


 後ろからデラクとライムの話声が聞こえる。皆緊張と恐怖のあまり誰一人と声を出していないため最前列の俺らにも声が聞こえる。


 二人の声に耳を傾けながら歩いていると階段が見える範囲に現れた。


あるじ様、この階の周辺には敵性生物はいないため先行して階下の様子を確認してきてもよろしいでしょうか?」

「ああ、頼む。」


 俺が頼むとすぐに階段の方まで走っていき少し行くとナイトのものと思われる戦闘音が聞こえてくる。


「ライム、少しこっちに来てくれるか?」

「かしこまりました。」


 俺がライムを呼ぶと人の隙間を搔い潜り俺の下まで現れた。


「どうされました?」

「すまなないが上の階を見に行ってきてくれるか?偵察だけで構わない。処理できるならば構わないがあまり無理はするないいな?」

「かしこまりました。マスター」


 そう言い残しライムもまた素早く階段を上っていく。


 下はナイトが一掃してくれるだろう。問題はやっぱり上階、移動中の合間に襲撃されればひとたまりもない。ライムには偵察だけを任せて挟み撃ちの可能性を断つ。


 これで多分危険は減るだろう。ただなんだ、俺は間違ってないはずなのに嫌な予感が背筋がゾッとするような感覚が常にある……


「直弥?お前大丈夫か?顔が青いが……」

「え?ああ、大丈夫だ……」

「そうか、……なあ聞きたいんだがライムって戦闘面ではあまり使えなかったよな?デラクじゃなくてよかったのか?」

「ああ、別に偵察だけだからな。偵察だけならあの子の右に出る子はいない」

「そうだったな。」


 しばらくあきらと二階の階段の間で待機していると下からナイトが上がってきた。


「主様、一階の掃討完了しました。ただ戦闘音と血の匂いで他のモンスターが集まてしまうかもしれません。直ちにこの場から移動しましょう。」

「わかった。じゃあナイト、お前は先頭で先に行ってくれ、ライムとすぐに追いつく。」

「かしこまりました。お気をつけて。」

「直弥、お前が行く意味あるのか?ナイトにでも……」

「さっきもナイトが言っていたがすぐにでも体育館へ向かうべきだ。ナイトは何かあった時のためにも先頭にいるべきだ。それに多分あの子もすぐ近くにいるだろうからすぐに合流して戻るよ。」

「……気をつけろよ。」

「ああ」


 俺は彰たちと別れ三階への階段をゆっくりと歩いていく。


 さて、あまり声は出せないしすぐ上にいてくれればいいが……


 俺は階段をのぼうえがる。階段を上り切り左右を見渡そうと顔を左に向けたときそれはあった。ここの三年生の生徒たちの死体の山が築き上げられていた。


「…………ッ!!??」


 俺は本能でまずいと悟り急いでライムを探そうと死体の山とは逆の廊下を見たときすぐそこにいた。


 下半身と左腕の部分を失い、壁に弱弱しくもたれているライムの体があった。

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