第6話新たなる仲間(1)

「……んっ」


 重いまぶたをゆっくりと開ける。


どうやら壁にもたれて眠っているらしい。


 俺は……気絶していたのか……


気絶したのが原因かなぜだか物凄く体がだるい……


 ぼやけた目で辺りを見渡しているとあきらが目を覚ました俺に気づき声をかけてきた。


直弥なおや!目が覚めたのか!」


「あ、ああ……」


 ホッと息を吐くあきらを横目に今度はハッキリとした目で辺りを見渡すと、どうも俺はバリケードの中にいるらしい。


バリケードの外にはいつの間にか帰ってきているナイトが剣を地面に突き立て辺りを警戒していた。


 帰ってきてたのか……てことは結構な時間寝ていたことになるのか?


 辺りをボーと見渡していると横からオドオドした声で呼びかけられた。


「あの…その…どこか痛い所とかありますか……?」


「えっと……あ、はい、大丈夫です。」


「そ…そうですか~よかったです……」


 横から話しかけてきたのは女子生徒の緒山おやまあかねさんだ。


 運動神経はあまりいい方とは言えないが、学業の面で常に学級内で三位以内をキープし続けクラス内では学級委員長を務めており綺麗な丸眼鏡に三つ編みのお下げを肩から垂らした物静かな学生だ。


 小さな声で少し聞き取りずらかったがどうも怪我の具合を確認したらしい。


オドオドしながらも俺の右腕を気にしている。


 先ほどから違和感しかない右腕の状況、やはり右腕は無くなっている。


右腕を動かそうとすると肩を大きく使ってでしか動かない。


 ただ痛みはない。


多分ではあるがナイトがダメージを肩代わりしてくれたおかげで痛いなどはなくなっているだろう。


 痛みはないがとてもだるい、倦怠感けんたいかんが押し寄せてきている。


 俺が少し荒く呼吸をし始めるとあきらがそれに気づき心配そうに顔を覗き込む。


「大丈夫か?……やっぱり貧血くさいな。」


「貧血……?」


「ああ、緒山さんが言ってたんだ。右腕の傷が完全に塞がってるだろ?」


 無くなってしまった右腕を確認すると確かに綺麗になっている。血は一滴も付いておらず痛みも感じない。


「確かに傷口は綺麗に塞がっている、これは多分緊急召喚したナイトが肩代わりしてくれたおかげじゃないかな。」


「それだよ、ゲームではさダメージを肩代わりして守る最強の盾って感じで召喚した後は一切の後遺症なんかはなかったけどさ、多分現実だと痛みだったり傷だったりはダメージとして変換、その後肩代わりって感じになっても失った血までは補わないんじゃないかと考えてな。」


「それでこんなに怠いのか……」


「失った血の量が多すぎたんだと思います。」


 先ほどまでじっとこちらを見ているだけで会話には参加してこなかった緒山おやまさんが会話に参加してきた。


「あ、ああ……あれだけ血だまりができればね。」


 いきなり会話に乱入してくるものだから呆気にとられてしまった。


そして緒山さんはというとまたじっと俺の顔を凝視している。


「えっと緒山さん?もしかして俺の顔に何か付いてる?」


「い、いえ……」


 急に話しかけられたのに驚いたのかオドオドしながらの受け答えの末プイッとそっぽを向いてしまった。


 なんなんだ一体……


そう訝しげに思っているとこそっとあきらが教えてくれた。


「多分だけどさ、俺らというかお前だけかなを警戒してんだと思うぜ。」


「警戒……?」


 確かに言われてみればいたるところから視線を感じる。


「ああ、お前が寝ている間に今がどうなっているのかとかをクラスメイトの奴らに聞かれてさ、そこにはナイトのこともあったからお前の介抱を条件に俺の知っている情報を話したんだ。それでさお前がゲーム内でモンスターテイマーでナイトはお前のテイムモンスターってのを話したんだ。それがさ、もしかしてこの騒動を起こしたのがお前なんじゃねっていう疑惑の念が生まれちまってな、お前に少しでも怪しい動きがあるなら何が何でもって考えがな。一応誤解だと話して落ち着かせたはいいんだがまだ少し疑ってるらしくてさ、だからお前のことをよく見ようとしてたんだと思うぜ。」


 そう言って緒山さんの後ろ姿を見つめながら「ただ顔を凝視するなんてちょっと素直すぎるけどな」っと小さく笑った。


「それで……」


「お前が俺以外との接触を極力避けようとしていたツケがここで回ってきたって感じだな。まあでも今は少しパニックになっている状態だったからそういう考えが浮かんでしまっているだけで時間をかければ多分収まると思うぜ。お前がいなかったらみんな死んでるっていうのも自覚はあると思うしな。」


「そっか、ありがとうなあきら。」


「命の恩人なんだからこれくらいはするさ。」


 そういっていつものようにニカッと笑って見せてくれた。



 

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