第5話ブラットベアーとの決着

 漆黒の鎧に身を包み俺の前にひざまずくその騎士はどこか見覚えのある姿をしていた。


 俺の知るゲーム、アオゲー内で始めてテイマーとして手に入れたモンスター骸骨スケルトン


それを五年間手塩にかけて育てた俺の騎士。


「お前、ナイトか……?」


「はい、我が主の騎士ナイトにございます。」


 俺は驚愕した。


だって、ゲームの中のキャラクターそれも俺が育てた騎士が目の前にいるのだ。


びっくりしないわけがない、それにゲーム内で聞いていた声と同じで本当にゲーム内から飛び出してきたような…


いや、飛び出してきたと考えるべきなのか。


 俺が感激に浸っていると、俺はふと悪寒を感じた。


そう、忘れていた。


 俺は先ほどからいろいろなことが起こりすぎており、軽いパニックになっているのか目の前の状況しか考えることができずブラットベアーのことをすっかり忘れていたのだ。


 ブラットベアーはというといつの間にか黒板下から消えており扉の横からナイトではなく俺をターゲットにその獰猛な牙を見せ今にも飛び掛かる準備をしているところであった。


 俺は慌ててナイトに命令する。


今の状況を整理するためにも先にあいつを始末しないことには始まらないのだ。


「ナイト!お前の後ろのブラットベアーを斬ってくれ……!」


「御意」


 たった一言だった。


 その命令を待っていたと言わんばかりにスッと立ち上がると、先ほどまではなかった二メートルのナイトを覆い隠すほどの大盾を左手に装備し俺を守るように目の前に立ち塞がった。


 盾を構える隙間から少しだけ見えるブラットベアーは気を狙っているのか一向にその場から動く気配を見せない。


「……グルルル」


 小さく唸るブラットベアーと盾を構え殺気を飛ばすナイト。


誰かの唾を飲む音さえも聞こえてくる一瞬の静寂の後、痺れを切らしたブラットベアーが咆哮と共に突撃を仕掛けてきた。


「グゥルアアア!」

 

 目にも止まらぬ速さで迫ってきたブラットベアーをナイトは慌てる様子もなく冷静に対処する。


 ブラットベアーはナイトの視界の外に一瞬で移動した後、再度突撃を仕掛ける。


狙いはあくまでも俺、ブラットベアーはナイトの後ろに隠れる直弥なおやが見える位置、後ろにある黒板の位置まで移動し、突撃する。


 その間訳1.5秒、一瞬にして直弥の目の前まで飛び、直弥の首筋を一瞬で引きちぎるつまりでその鋭利な牙を剝き出しにし、喉元に喰らいつこうとした瞬間、真横からの凄まじい衝撃と共に外窓の下の壁に激突した。


 ドンッという衝撃音がクラス中に響き、音のする方を見ると壁にくぼみをつけて血を吐いているブラットベアーが横たわっていた。


 ブラットベアーが突撃を仕掛けてくる瞬間に右手に持っていた大剣の腹の部分で弾き飛ばしたのだ。


 ナイトはゆっくりとぐったり横たわっているブラットベアーの傍に寄ると持っている大剣でその首を切り取った。


ほんの一瞬の出来事。


首を斬られたブラットベアーはもう動くことはなく、ただの屍へとなり果てた。


「主よ、命令遂行いたしました。」


「あ、ああ……」


 一瞬の出来事だったためにポカンと呆けてしまっていたがナイトの呼びかけによって今の状況を理解する。


「……よくやってくれた。助かったよ、ありがとう。」


「いえ、主を守ることが我が使命なれば、ただ一つだけ、まだ近くに複数のモンスターの気配を感じます。先ほどのブラットベアーの咆哮で近寄ってきているのかもしれません。安全のため近くにいるモンスターを狩って参っても構いませんか?」


 ちょっと待ってくれ、色んなことがありすぎて頭が回らない……


少しだけ時間をくれとナイトの言い、頭の中を整理した。


 できれば傍に居て欲しい、正直ナイトが俺から離れることに対して不安しかない。


がそうも言っていられない。


 先ほどまで聞こえていた悲鳴や破壊音などは聞こえてこず物静かになっている。


もう他クラスでの虐殺は終わってしまったのだろう。


ただ、それでももしかしたらまだ生存者がいるかもしれない。


なら行かせるべきか……。


「頼むナイト近くの敵を狩りつくしてくれ!……それと、もし生存者がいた場合は全員助けてここに連れてきてくれ。」


「御意」


 承諾の返事を残すと剣についた血を払い飛ばし左の教室に走っていった。


狭くて通れない扉を斬り壊しながら……


 左の教室から響く斬撃音を聞きながら俺はゆっくりとその意識を落とし床に倒れこんだ。

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