第7話 ポエム?
先生の事を『凪子』とあっさり呼び捨てにした事とスルーするとして……。
しかも本名は凪な訳で、子は付いていないのだが、平安風にしたのだろうか…。
普通に考えれば、異世界と元の世界が数年に一度行き来出来る。って事で良いんだよね。
複雑に言っているように聞こえるけど、整理するとそうだよね。
もう今更、吃驚しても始まらない。
そうゆう事が現実に起こるんだと言う事を受け入れよう。
よくあるじゃないか、異世界転移ものって。
それが我が身に起きたと考えよう。
なんらかの理由で異世界転移が起きた訳じゃなく、異世界の方から意図的に起こされたということが若干違うけど。
平安時代っぽいといえば、陰陽師がいたりするのかな?
術系の何かがあるのかな?
それで瑠佳君はといえば、幼児期に一度私がいた世界にやって来て、保育園に通って、どのタイミングかは分からないが、一旦戻り今に至る。
人攫い?
ちょっと穏やかじゃない単語が出てしまった
策がはまっただけ、という感じか。
いやいやいや。
駄目でしょ? そこは不問にしちゃ。
呼び捨てとは訳が違う。
「瑠佳君」
私は作り笑いの様ににっこり笑った。
こういう笑い方をする時は、大体その後に、お説教が来るものだ。
「先生の事、連れ去ったの瑠佳君で、意図的で良いんだよね」
そうすると敵? もさる事ながら、もっと完璧な作り笑いをして答えた。
「もちろんですよ、凪子先生。当たり前の事を聞かないで下さい。僕がインターホンを押し、時空間を越えてわざわざ迎えに行ったのです。大変でした」
ふうと溜息まで漏らす始末だ。
いや、何? このふてぶてしさは?
可愛くて、優しい瑠佳君はどこ?
大変ならわざわざ時空間を越えなくていいって!
「うんうん、大変だったね。じゃあなんでその大変な事をやってまで、先生を異世界に連れて来たのかな?」
「それはですね……」
そこで、先程よりも言い淀む。
ちょっと言いにくい事のようだ。
ふむ。少し可愛げが戻って来たじゃないか。
「僕も年頃になりまして」
確かに、世界によっては年頃かもね。
「身分のお話はしたくありませんが、僕のような立場に置かれた人間は元服後、閨の教育というものが行われます」
「………」
そこまで話すと、瑠佳君はオッホンと大きく咳をする。
私は私で頬を赤らめる。
なんだかとっても恥ずかしいじゃないか。
素面では聞いていられないというか……。
かつて先生と園児という立場だったからか、尚更恥ずかしい。
だが、それは瑠佳君にも言えることのようで、なにか頻りにオッホンオッホン言っている。
会議室にいるオッサンか!?
「それで、ですね。その相手というのは、もう決めていたのです」
へーとしか相づちが打てない。
それ以外、なんと言えと。
つまりは、その相手というのが、泉の守の娘とやらなんでしょ? 分かった。うん。分かった。
皆まで言わずに理解しましたとも。
ここに来て一番最初に聞いた言葉だもんね。
ならば、彼、つまり瑠佳君が四の宮という事なのでしょう。
「そして、その相手というのが凪子先生なのです」
瑠佳君は多少照れた感じではあるが、言い切ったという事で満足げだった。
一方私はというと、お茶を飲んでいたら確実に吹き出していただろうという驚きようだ。
なんですと!?
どうしてそうなった!?
私は開いた口が塞がらないという感じで、呆然というか愕然としていた。
いやいやいや。
ちょっと待て!
年齢にして二十二歳差だ。
立場は先生と元園児。
どうしたらそう転ぶ!?
倒れた直後に聞いた男の人の声は、
確かに『閨の教育係』の任命だったが、私は泉の守の娘じゃない。よね?
え?
どうゆうこと?
「凪子先生?」
私があたふたと戸惑っていると、随分近くで瑠佳君の声が聞こえた。
「え?」
顔を上げると間近に彼がいた。
「そんなに驚かないで下さい」
いや、驚くでしょう?
高校生とか大学生というならいざ知らず、保育園に通っていた子と先生が閨の教育係をするって……。
絶句以外の何ものでもない。
ついでにあまりに近くにいて二重に驚きました。
「良いじゃないですか? 凪子先生と僕の仲です。そういう関係になるのが自然ではないですか」
仲って……? 先生と園児という仲でしかないのですが……。
自然というよりは不自然ですよね?
「泉の守の娘? というのは?」
そこ聞くよね? 見に覚えがないんだから。
「それはですね。身分上ちょうど良かったので、泉の守の養子ということにしました。本当は殿上人に引き取らせて『妃』という扱いにしたかったのですが、そうすると僕の閨の教育係が違う女性に決まってしまいます。得体の知れない人を抱くのは気が進みませんからね。初めては絶対凪子先生じゃなきゃイヤでしたから。それでさっさと子を成して、なんとかドサクサに紛れて寵妃にすれば良いのです。一の宮ではなく四の宮ですからね。大丈夫です。それくらい融通利くでしょう」
「………」
瑠佳君が、なんだか都合の良いことをべらべらしゃべり出したよ?
「……あの寵妃とか言ってますけど、私三十五歳ですよ? 瑠佳君が二十三歳の時四十五歳で、三十三歳の時五十五歳なんですけど」
「知っています。変わらず愛し続ける自信があります」
えー……。
こうなったらあれを言うしかない。取って置きの秘密だったがしょうがない。
言う!
今まで誰にも言った事がなかったけど、言う。
「先生、処女なんです。今まで誰にも抱かれた事がありません。閨の教育なんて出来ないんです」
言ったっ。
言っちゃった。
恥ずかしいけど、今言わずにいつ言うのだ!
「知ってます。安心して下さい。教育なんて要りません。僕に身を任せてくれれば大丈夫です」
知ってるの!?
なんで知ってるの!?
知らないでしょう!!
知らないよね!
しかも、身を任せてって、瑠佳君も初めてだって、さっきちらっと言ってたよね?
聞き逃してはいないのよ?
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