第5話 少年は好きですか?
私が口を開こうとしたその瞬間、少年の方が先に言葉を発した。
「男の人は好きですか?」
「?」
????????
聞き間違い?
とんでもない言葉が聞こえた気がして、耳を疑う。
男の人を好きですか?
って、聞いた……?
「……あの…」
私は困惑しながら口を開く。
「男の人は好きですか?」
少年は一言一句違わず、また同じ言葉を口にした。
聞き間違えじゃなかった………。
え……ーーー。
答え難い質問ですよね?
どう贔屓目に見ても、初対面の人に聞く内容じゃないはず……。
私は少年をまじまじと見てしまった。
人畜無害な顔をして、以外に聞きにくい事をハッキリ聞ける性格らしい。
少しいたずらっ子のように笑った。
笑うとなんだか、より一層可愛いです。
うん。答えよう。そうしよう。
でも何て?
好きか嫌いかって、結構難しい質問だと思う。
好き嫌いで考えた事がないというか……。
でも、まあ、今の今まで彼氏という存在がいなかった訳で、そう考えると大好きというのは事実に反するかもしれない。
じゃあ、嫌いかと問われれば、決して嫌いではない。ちゃんと結婚願望はある。はず?
「……普通? なのでしょうか?」
疑問系で答えてしまった。
こんな答えにくい質問に真剣に考えて答えを出しただけ褒めて欲しかったりする。
もちろん、お褒めの言葉はない。
うん。ないね!
「じゃあ、少年は?」
「大好きです」
私は食い気味に即答していた。
考えるまでもない。大好きだ。
大好きじゃないと務まらないよ?
保育士だよ?
嫌いじゃ、仕事が楽しくなくなっちゃう。
「じゃあ、少年のカテゴリは何歳から何歳までですか?」
カテゴリ……。
片仮名? というか英語……。
そもそも異世界語?
内容が理解出来るが故に、言語判定が出来ないというジレンマ。
何となく、ここは平安時代で、私は異世界というか過去に来てしまった? というロマンシズムに浸っていたのだが、一瞬で壊れた。
ロマンはロマン。
妄想は妄想。
現実は現実。
世知辛いです。
期待してましたよ?
そういう乙女の妄想を。
しかし、ショックを受けつつも、質問の返事は返さなくてはいけない。
マナーですから。
うん。立ち直ろう。
さてー
少年のカテゴリか……。
四、五歳くらいからかな……。
歩行も安定して、走れるようになって、赤ちゃんからハッキリと幼児の体つきになる。
0歳~三歳くらいまでは、ホント性別はないに等しいし、少年とか少女とか思った事がない。
うん。四歳からが少年の始まりだ。
じゃあ、上はどこまでだろう?
二十歳は大人だ。
一般的には二十五までは成長期らしいのだが、少年とは言い難い。
う~ん。
十六、十七歳?
十八歳を混ぜるか混ぜないか?
選挙権が有り、車も運転できて、一つの目安になる年齢だ。
うん、決めた。
「四歳から十七歳でしょうか」
しっかり考えてから決めたので、自信のある答えだ。
なぜ胸を張って堂々と答える。なんで得意げ?
「僕は十三歳なので、射程圏内ですね」
射程圏内??
いや、少年の圏内ではあるが、射程ではないよね?
射程って狙いという意味だよね?
ちょっと待って?
少年というカテゴリは、所謂男女の射程圏内とは全然違うよ?
四歳から始まるんだよ?
射程圏内だったら、社会的に終わってるよ?
「いえ、射程圏内ではありません」
私は、ハキハキと否定した。
まだ社会人でいたいです。
「いや、射程圏内です」
何故か少年もそこはハッキリ言い切った。
ーーー?
どうして、君が私の射程圏内をキッパリ決断する?
ちなみに少年という範疇は、私の恋愛範囲外である。三十五歳だよ? 十三歳って何歳さ?
二十二歳差か……。
凄い差だな……。
私が大学を出る時、赤ちゃん。
正しく犯罪だね!
よし、話を戻そう。
少し混乱したが、仕切り直しだ。
「あの、何の射程圏内か聞いて良いですか?」
二人の間に誤解があるのかもしれない。
うん。そうだよね!
「男女の色恋の射程圏内です」
言い切った! 少年が言いにくい事言い切った。
「ちなみに僕の射程圏は三十五歳以上、三十六歳未満です」
狭!
ちょう狭!
極狭!
私が三十五歳って知ってるんですか?!
吃驚して声も出なかった。
おばさんをからかっちゃいけません。
歳なので、心臓が止まっちゃいます。
「あの、つかぬ事をお伺いしますが、今西暦何年ですか?」
「平安時代に似ていますけど、異世界は西暦使いませんよね」
…………。
やっぱりそう来る!?
けど平安時代に似てるって認めてるね!
じゃあ乙女の妄想で疑似平安時代って事にしておきます。
しかし、「西暦は使いません」って返事。
普通じゃないよね。
片仮名使ってたし。
彼は所謂片仮名は使えるし、西暦も使える。そして年上好き。
人物像を纏めてみましたが、OK?
「あの、年上がお好きなのですか?」
その質問に少年はにっこりと笑った。
「年上が好きなのではありません。凪子が好きなのです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます