20話 ラグナリアを超える痴女



「答えは簡単だ。周東を世間的に悪にすればいいだけだ」



「でも、あいつは……」


「そう、シリアの言う通り人気者だ。だが、テレビに名の知れたやつを堕とす方法ならある」


 そこで真っ先に手を挙げたのはメルちゃん。


「知ってます。『シュキャンダル』ってやつですよね!」


「そうな。メルちゃんは賢いな」


 とワシワシ。メルちゃんの頭を撫でに撫でまくった。こんな可愛い生き物この世界じゃいねぇよ。帰る前にめっちゃ味わっておかなきゃ損だろ。


「とにかくそういう事。周東のスキャンダルな情報を集めて、最悪捏造さえして、世間的に貶おとしめるところから始めなくてはならない」



 その方法が…………と話そうとした時、空から何かが声をあげながら落下してくる。


 おそらくその声は「スキャンダルなら任せなさい」と。アホほどアホそうな高めの声で、アホな奴はパラシュートの一つもつけずに。



 その声が他の三人にも聞こえたようで「うわ、ついに来ちまったよ」みたいな表情とため息を浮かべる。


 そしてその物体はまさかの自由落下でないことを示すべく俺の前でひらひらと翼を羽ばたかせ無事着地。


 頭に角を二本生やし、露出度はシリアをバリ超えての高め。てかもはや見せに来てるレベル。風俗店にでも置いておけば寄ってこない男は無いだろうってくらいの豊満な胸にくびれ。


 おまけにお尻付近からは先端がハート形をした黒い尻尾を生やし、もはやこの世界の人間でない事丸出しで。



「はぁ~い☆ 私の事をお呼びで。キラン」



 と。もはやセルフで効果音を付けちゃいながら瞳の前でピースを浮かべるその少女は。瞬間に俺の腕に抱き着き、彼女でもないくせにやたら近すぎるスキンシップを。


「スキャンダルなら私が居れば何の問題も無い。私のこの体に堕とせない男は一人もいなんだから」


 自信満々に語る少女は「一度お試ししてみましょうか?」と夜中の露出プレイがご希望なご様子で。



「って! ふざけんな」



 俺のスキャンダル作ってどうすんだよ! てかなんだこの変態は。空から舞い降りていきなり「ヤろう」ってナニもんだよ! もはやラグナリアを超えた痴女はそれでも俺から腕を離さず…………。


「心外。私は痴女じゃない」


 と初代痴女が否定をしていたが、これがあんたらの世界の痴女なら確かにラグナリアは可愛いものだと認めざるを得ない気も……。


「ったく。いつまでじらしてんのよ。いつになったら私を気持ちよく…………ふぎゃー!」


 取りあえずヤバい奴は叩いておいた。寝袋もそうだがラグナリアは何でも召喚できるみたいで即座にハエ叩きを召喚してもらい一撃。何ならメルちゃんの持つハンマーでもいい気はしたけれど。



「ちょっとちょっと何で急に叩くんさ。女の子をいきなり叩くとか…………まさかドSそっち系?」


「ちゃうわボケ!」


「良いわよいいわよ。私の中にはいろんな機能が搭載されてるからどんなプレイにも対応可。にしても野外でそのプレイは…………」


 だからしないからね。そんなことしたらそれこそ警察行だから。



「で、誰なんだよこの変態は。どうせお前らの知り合いなんだろ!」


 だが、そこにいる三人口をそろえて「そんな人知らない」と。


「ちょっとちょっとあなた達三人は私と苦楽を共にして毎夜毎夜色々なところを舐めあった――――」


 その瞬間本当にメルちゃんのハンマーで叩かれた。


「メルはまだ十一歳です。そういう十五禁や十八禁はやめてください!」


 と言いつつ十五禁的暴力を振るうこの小学生をほっておいていいのだろうか。



「とにかく翔君勘違いしないでよ。私たちが毎夜毎夜舐めあったのは寝苦しい夜にアイスクリームを舐めあっただけなんだから」


 と。そうですか。異世界でも夜は寝苦しいのですか。


「で、そろそろ私もちゃんと混ぜてよ」


 明らかに復活の早い変態は「サキュバスのキーラよ」と倒れていたことを良いことに下から煽るようなエロい視線で自己紹介を。いや、ちゃんと立って目を見て自己紹介しよ?


「そんでスキャンダルという名の私を呼ぶ声が聞こえてきたから飛んできたんだけど誰を気持ちよくすればいいのかしら?」


 と、もういちいち突っ込みませんから。突っ込みたい人はご自由にどうぞ。


「とにかく、すぐ目の前におっきな屋敷が見えるだろ。あん中に政治家の周東正之がいんだわ」


「周東ってメガネの真面目そうに見えてエグイ事を考えてそうなあの!」


 目をキラキラ輝かせながら。


「はぁはぁ。あの男に私は犯されるのね。屈強な男にグイっと一気にやられるのもいいけど、ああいうのが意外性を発揮して――――ふげぇ!」


 再びメルちゃんにハンマーで叩かれた。多分ゴキブリ並みに生存力の強い彼女には大したダメ―ジでは無いんだろうけど。


「誰がゴキブリよ!」


「復活早すぎだわ!」



「乙女をゴキブリ呼ばわりとはあまり良くないね。もしかしてお仕置きがご所望で?」


「所望しておりません。おりませんのでお引き取り下さい」



「……まぁ分かったわ。あの男にアプローチを掛けて堕とせばいいんでしょ。いいわよ。私の体になじませてやるから」


 一応それは女のセリフじゃ無いんだけどね……。


 そんなツッコミもよそにキーラは再び空へと舞い上がっていった。



「とりあえず完了したら報告するからそれまでは待ってなさい」


 と。ヒーローが仕事をしに行くか如く大空へ。初めてキーラのかっこいいとこを見た気もするがだらしなく尻尾を揺らしながらよがっているのを見ると一瞬で「俺の気持ちを返せよ」ってなる。



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