演目その5 無観客
ツクテンテン、テンテン・トンテン、チャカテンテン♪
えー、毎度バカバカしい
ついに始まっちまいましたねぇ。東京オリンピック。無観客で。
「当たり前だ」
「残念だ」
「決めるのが遅い」
「中止じゃないのか」
なーんていろいろ皆さん言っていますが、まぁ招致した時にはコロナなんてなかったわけで、その後コロナが広まって、予想外の事態になって、どっちに転んでも誰かが文句を言う状況。
ストレスが溜まっているから、みぃーんな何か文句を言いたいわけですね。
えー、ここにもそんなご家庭がございまして。
オリンピック中止派の熊吉がオリンピック関連のニュースをテレビを見て、画面に映るキャスター相手にブツブツと文句を言っておりますってぇと、そこへ画面が切り替わって政治家が映し出されて、五輪の意義なんてものを喋り始めちゃったから、あら大変。
熊吉、ぶち切れちまって、テレビ画面を相手に、カンカンになって文句を言い始めました。
「いや安心安全っていうけれどもね、いくら注意喚起したって、隣の観客が、歓声上げたり、その事に
完全な安全なんてあるわけがない、感染のリスクはあるわけで、看過できない事態だよ。
官房長官の言う『最大限の関心を持って注視しております』なんて、そんなものァ、状況を勘案することなく、官僚が用意したカンニングペーパーを読んでいるだけで、簡単に
棺桶に片足突っ込んだ状態で、『これが監督選手一丸となっての
一部の役員だけで歓迎の歓会やったりしてさ、観光客が来ないから閑古鳥がなくお店への還元もないのに
あまりにも熊吉がカンカン・カンカンと
「あーもぅ、カンカン・カンカンうるさいわねぇ!
健康リスクの
見識のある人が十分に検討と検証をした結果、検査と対策で健全な大会運営が可能って決断をしたんだから、黙って選手が健闘するのを応援すればいいじゃないの」
言われた熊吉は渾身の声を張り上げ、言い返します。
「ケンケン・ケンケンと
根拠も出さずに安全だなんて、国民を馬鹿にするにもほどがあるって言ってんだ。
混雑している街中や、困窮している事業者や、困惑している庶民や、混乱している医療の現場が見えていないんじゃないか。だいたい政権自体が混迷の極みじゃないか。
ああ、しゃべりすぎて喉が渇いた」
そう言って、ビールの缶をプシュ! と開けます。
熊吉の穏やかじゃない発言に対して、お絹さんがキンキン声を張り上げて言い返します。
「ちっとは落ち着きなさいよ! まったく熱っくるしい!
なんでもかでも禁止だダメだって言えばいいってもんじゃあないのよ!
勤勉な努力によって鍛え上げられた筋肉に
ああ、こっちこそ大声張り上げて喉が渇いたわ、ビール飲みたい」
そう言って、こちらもビールの缶をプシュ!と開け、こう続けます。
「観客だって入れた方がいいのに」
「まったくだ、観客も入れないのにオリンピックやったって、意味がねぇや。
スポーツ観戦なんてのは、ビール飲みながら大声上げて見ず知らずの人とも肩組んで、一丸となって応援するからこそ楽しいんだ」
熊吉、さらに二本目のビールに手を伸ばして、こう続けます。
「やっぱりスポーツの話題にはビールだな」
その様子を見て、それまで両親のやりとりを黙って聞いていた息子がぼそりと一言。
「こういう観戦に向かん客がいるから、無観客なんだよ」
はい、お後がよろしいようで。
みなさんもね、ウイルス対策しっかりやりましょうね。ワクチン打った後も免疫が付くまでしばらくかかりますからね、マスク捨てちゃだめですよ~。
では。ここいらへんで失礼をば。
ツクテンテン、テンテン・トンテン、チャカテンテン……
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