演目その3 第三波

 ツクテンテン、テンテン・トンテン、チャカテンテン♪


 えー、毎度バカバカしい小噺こばなし一席いっせき


 ちまたじゃあ、もう、コロナの第三波です、一日当たりの感染者数が記録更新しています、って大変なことになっていますね。医療現場はひっ迫してきてるし、忘年会も新年会も帰省も初詣も行ってる場合じゃないって、ねぇ。

 飲食業や観光関係のお仕事されている方は大変ですが、イベント関係のお仕事の方も大変で。あれは、人が集まって密にならないと仕事になりませんからね。


 今年もいろんなイベントが中止になっちゃいましが、世のお父さんたちが一番残念だったのは、浅草名物の浅草サンバカーニバルじゃあないでしょうか。

 こちらもコロナの影響で開催延期、来年への持ち越しとなりましたが、あれはもう、綺麗なお姉さんたちが肌を露出して踊りまくるのを堂々と眺められる夢のような一日ですから、なんとかして、新しい生活様式にのっとってやって欲しいイベントなわけなんです。


 えー、ちょいと時計のネジを巻き戻していただきまして……時は2020年の秋。ちょうど浅草サンバカーニバルの延期が決まった時期でございます。ここに、浅草サンバカーニバルが大好きな、クマハチという、二人がおりまして……


「あーあ、俺っちの、年の一度の楽しみが吹っ飛んじまったぜ」

「まったく、アレが無くなっちゃあ、もう生きてる張り合いがねぇなぁ」

「まったくだ。綺麗なお姉さんが、ビキニ姿でおっぱいもお尻もプリンプルンさせながら踊りまくっているのを、正々堂々と、しかも無料で拝める日なんて、他にゃねぇからなぁ。俺にとっちゃあ、盆と正月とクリスマスと誕生日と有給休暇とが一度にやってきたような特別な日だったのに」

「有給休暇って、おめぇ、ニートじゃねぇか。何言ってやがんだ」

「まぁ、言ってみたかっただけよ。兎に角、それぐらい特別な日だってことよ」

「そうだ! 俺たちでサンバのチームを作ろうじゃないか。

 そうすりゃあ、練習している間ずっと、綺麗なお姉さんのおっぱいとお尻プリンプルン踊りをずっと見ていられる。開催するかどうかわからない来年の祭りを待つよりも、こっちの方が確かな話じゃねぇか」


 まぁ、実際は練習中にビキニ着ているわけじゃあないんですが、それでもお姉さんと一緒にいられる時間があるだけいいってんで、熊と八の二人で、新しいサンバのチームを作って、参加する側になろうって話になりました。


 じゃあ、まずは人集めだってんで、ネットで「新しいサンバのチーム作るよー」なんて朗らかに宣伝を始めたんですが、これがなかなか大変で。


「面倒くさい」

「恥ずかしい」

「意味わかんない」


 まぁ、大抵の日本人にとっちゃあ、サンバって馴染みがない文化ですからね。なかなかやりたいという子が見つからない。


 そこで、八が一工夫。

「参加すると、YouTubeやTwitterのフォロワー増えるよ」とネットに書き込んだら、あっという間に参加希望者が集まってきた。


 しかし、人が集まり始めたところで、チームのなかに病気を理由として止めると言い出した子が出た。これがきっかけで、チーム内でクラスター発生のデマが流れる。熊と八は、必死で打ち消すが、なかなか風評被害というものは消えない。


 コロナが少し落ち着いて、政府も「go toキャンペーン」なんかを始めちゃって、世の中が前向きになって、やっとまた参加希望者が出て来たところで、今度は第三波。政府が「家で大人しくしていなさい」と言い出して、また人が止めていく。


 女の子の常で、一人がやると言えば、芋づる式に「私も」「私も」「やる」「やる」となり、一人が止めると言い出すと、これまた芋づる式に「私も」「私も」「やめる」「やめる」となり、人数が極端に増えたり減ったりするもんだから、その都度、衣装や靴なんかの発注数が変わって、サンバ特有の隊列も組み直ししなくちゃならないので、大いに困る。


「困った。困った。ドーっと増えたり、ドーっと減ったり、どうにも人数が安定しねぇ」と、ぼやく八に、熊が一言。


「しょうがねえ、リズムがあるモンなんだよ。三波サンバだけにね!」


 ハイ、お後がよろしいようで。


 みなさんもね、年末年始も引き続き、「三密」を避けて「五つの小」でいきましょう。

 会食は『小人数』で、料理は『小皿』に分けて、『小声』でおしゃべり、『小まめ』に換気や消毒を。なるべく『小一時間』で切り上げて。ね、しっかりコロナ対策やりましょうね。


 では。ここいらへんで失礼をば。


 ツクテンテン、テンテン・トンテン、チャカテンテン……

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