授業準備2
私は桃瀬紗蘭。私は友達の白と一緒に下校の準備をしていた。春を迎えていたのに、外はやけに肌寒い。
「紗蘭、帰ろ。」
いつも帰りの支度が早い白は軽い学生鞄を背負うと私の机の上に腰掛けた。相変わらず手にはスマホが握られ、ヘッドホンは耳に装着してある。私は頷くと鞄を持ち、教室を出た。階段を降りて校門をくぐったその瞬間、私は上から何かが落ちてきたのを見た。
「きゃっ!!!」
私は驚いて白の腕をぎゅっと掴んだ。白はそんな私に驚いたのか、スマホを落としてしまった。
「なんだ?!どうした!!」
白は私を庇うように、前に立った。
「い、今何か上からっ…!!」
私達は周りを見渡したが、特に何も落ちていなかった。他にもたくさんの生徒が下校していたが誰も気づいた様子はない。
「紗蘭、疲れてるんじゃないの。今日は早く寝な。」
白はスマホを拾い上げると呆れたように言った。白の手に握られたスマホの画面は少しヒビが入っていた。
「スマホに、ヒビが…ごめん…。」
私の早とちりのせいで白の大事なスマホにヒビが入ってしまった。私は申し訳なさに頭を下げた。
「良いよ別に。」
「でもそれは白のお母さんがたくさん働いて頑張って買ってくれたものでしょ?」
私がそう言うと白は私に背を向けて歩き出した。しかし、少し歩いて立ち止まると私に背を向けたまま言った。
「紗蘭に何もなかったんだからいい。このスマホと引き換えに紗蘭を助けられるんならスマホなんかいらないよ。」
「たまには良いこと言うじゃない、白も!」
私は走って白に追いつくと肩を掴んだ。
「あれ?白、熱でもあるの?ちょっと顔赤いな。」
「そんなことは良いよ。早く帰ろ。」
そう言うと白は私の腕を掴み、歩き出した。その後、私はコンビニに寄ると言って、白と曲がり角で別れた。しかし、私にはまだ少し嫌な予感がしていた。私は必死に嫌な胸騒ぎを消そうと前を向き、さっきのはただの勘違いだと自分に言い聞かせ、土手の階段を下った。その瞬間、
「ドンッ」
「きゃあっ!!」
後ろから誰かに押されたような感じがして、気づくと視界が反転していた。
「女の子が落ちたわ!」
「早く!救急車だ!」
薄れゆく意識の中で、私は必死に頭を動かして私を突き落とした犯人の顔を見ようとした。犯人はもう私に背を向けていて、顔は見えなかったが、後ろ姿は気味が悪いほど小田先生にそっくりだった。
「いや…そんな、はずは…」
私は完全に意識を手放した。
目を覚ますと、そこは病院の中だった。下半身に少し重みを感じ、上半身を起こすとそこにはベッドに突っ伏して寝ている白がいた。
「あれ…私。ここは…?」
すると、何かをカルテに記録している看護師さんが私のベッドに近づいた。
「具合はどう?紗蘭ちゃんは二時間ほどずっと眠っていたのよ。悪いところはないからもうお家に帰れるわよ。それと、彼氏くんがずっとそばについててくれたんだから、お礼を言っておくのよ〜!」
看護師さんは笑いながら私にそう言った。
「ふふふ。彼氏じゃないですよ。白は私の幼馴染で一番の親友なんです!」
「じゃあ、一緒に居れている今を大切にするのよ。いつ何が起きるか分からないんだからね!」
看護師さんは急に冷静な顔をして言った。
「それってどういう…」
私が看護師さんに問う前に看護師さんはその場を離れてしまった。
「ん…」
私と看護師さんの会話に目を覚ましたのか、白が目をこすりながら起き上がった。
「紗蘭!!大丈夫か?!」
白は起き上がるか否かすぐに私の肩を掴んだ。
「どこにも異常はなかったわ!ありがとう!」
私は白と一緒に病院を出た。その夜、私は中々寝付くことができなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます