授業準備3
学年末が終わり、テスト返却日も過ぎた。後は春休みまで一直線だ。紗蘭と遊びに行く日以外一つも予定が入っていないが、寝坊できる休日は最高だ。しかし、学年末初日、みんながどこかしらを怪我していたことが少し気がかりだ。俺は料理中に考え事をしていたら、手を包丁で切り裂いてしまった。もちろん、紗蘭にすぐ手当てをしてもらったから大事には至らなかった。紗蘭は階段から転落したし、紗蘭の唯一の女友達、
「あ、紗蘭ちゃん!躑躅森くん!」
一番ドアの近くにいた神喰が俺達の元へ駆け寄ってきた。
「幸ちゃん?みんなは何を見ているの?」
紗蘭が俺の代わりにそう尋ねると神喰は黒板を指差した。そこには
『私は生徒にも教師にもあるが教師だけ特別である場所にいる。』
と書かれていた。
「これは…何かしら?」
紗蘭がうなるように黒板を見つめていると、急にドアが乱暴に開かれた。そこにいたのは教頭先生だった。
「大変悲しいお知らせなのですが、君達の担任の先生、小田真希先生が亡くなりました。」
「え…?」
「嘘でしょ…?」
周りからそんな声が聞こえ、俺も少し動揺してしまった。
「亡くなったのは、3月20日。君たちの学年末のちょうど前日ですね。」
「先生っ!!小田先生が死んだ原因って…?」
紗蘭がいち早く手を上げて質問した。
「それは我々教師にも知らされていません。終業式も無しとします。早く帰りなさい。」
教頭はそう言うとすぐにその場を去ってしまった。
「はぁ?せっかく来たのに。んだよ。」
田中はそう毒づくと、学生鞄をひっつかんで出ていってしまった。その後に佐藤と山田がそそくさと続く。
「小田先生…。」
紗蘭は思いつめたような顔で俯いていた。
「紗蘭。死んでしまったものはしょうがないんだ。もう帰ろ。」
僕が紗蘭の手を引くと、紗蘭はますます険しい表情で首を振った。
「黒板に書かれていたのはただのいたずら書きじゃないと思うの。それが分かるまで、家には帰らないわ。」
僕はため息をついた。こうなったら紗蘭はてこでも動かない。僕は自分の席に腰掛けると、スマホを取り出した。
「気が済んだら言って。」
「うん!ありがとう、白!」
紗蘭は顔を明るくさせると、ニコッと笑った。当然だ。この笑顔が見たくていつも一緒にいるんだから。
紗蘭が謎の意味に気づくのにはそれから数十分も経たなかった。その頃に教室には僕たち以外誰一人いなくなっていた。
「ほら、見てよ白!」
紗蘭の声が頭の上からして、画面から目を離すと、紗蘭の手には封筒に入ったDVDが握られていた。
「先生だけ私達と違うものって何かなって考えていたら机だって思いついたの!そしたら教卓の中にこんなものがあったのよ!」
変なものだったら危ない、と僕は紗蘭から封筒を奪い取り、カッターでゆっくり中身を取り出した。DVDの上に貼り付けてあるメモを見て、僕は絶句した。
「なになにー?何があったの?」
僕の頭に顎を乗せて、紗蘭がそのメモを覗き込んでくる。しかし、僕はワンテンポ隠すのが遅れてしまったのだ。
Death or Alive 名無死 @little_robot
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