Death or Alive

名無死

授業準備1

俺は躑躅森白つつじもりはく。世の中の人は『日常』と言われて何を思い浮かべるのか。俺が思い浮かべるのはこの日常。起きて、幼馴染の桃瀬紗蘭ももせさらと一緒に高校へ行く。授業を受け終わり、放課後紗蘭と寄り道をし、帰ってゲームをして夕飯を食べて寝る。この日常が繰り返されるだけだ。しかし、俺はこの日常に満足しきっており、何も不満はないのだが、俺の日常には他と少し違うところがある。それは俺の高校にはいじめがあるということだ。それも教師いじめだ。担任の小田真希おだまきをあらゆる手段でいじめ倒す。主な首謀者は佐藤甘音さとうあまね山田海やまだかい田中雷我たなからいがの不良三人組だ。髪を常に染めており、俺としてはあまり関わりたくない相手だ。きっかけは校庭でタバコを吸っていた田中を小田が叱ったことだ。これを言うのはあれだが、小田は若いながらとてもめんどくさく、田中に張り手を食らわせると、反省文三枚の刑を言い渡した。田中はみんなの前で怒られたことと、新米教師に殴られたということに対するプライドが許さなかったらしく、その翌日から小田をいじめ出した。俺はもちろんその中に加わってはいないし、学級委員兼風紀委員を務める紗蘭は止めにまで入るが一向にイジメが終わる気配はない。

 今日は小田がHRを始めようと、ドアを開けた瞬間頭の上にゴミが落ちてきた。

「あれぇ?先生、まだ学校来てんの?懲りないねぇ、あんたも。」

おそらく上にゴミ袋を設置したのは山田だ。元々つるんでいたのは佐藤と田中で二人に金魚のフンのようにひっついているのが山田。彼も気に入られようと必死なのだろう。しかし、その挑発に小田は一切乗らない。無言で自分の頭に落ちてきたゴミをはたき落とすと、ゴミを片付け始めた。そしてそのまま教卓に立つ。

「臭いので教室に入ってこないでくださーい!あんたはゴミなんだからさーっ!」

ギャルで素行が悪い芍薬エレナ《しゃくやくえれな》も小田を攻撃しだす。

「田中さんも芍薬さんもいい加減に。」

紗蘭が止めても彼らは上の空だ。始めはキレていた小田も、最近は抵抗をするわけでもなく、ただじっと耐えている。俺は何も手を出さないただの傍観者。俺は彼らから視線を外し、こっそり手に持ったスマホに集中する。俺が何か言ったところで何かが変わるってわけでもないし。

「じゃあ、連絡について話します。」

小田は小さい声で話し出す。その間にもみんなは好き勝手に騒いだり、紙飛行機を飛ばしたりし始める。

「くそ…負けたし。」

銃で撃たれて死んだ俺は少し顔を上げた。少し視線を感じて隣を

向くと、紗蘭がピースをしながらこっちを見ていた。紗蘭の持っているスマホに目をやると、「WIN!!」という文字がどでかく書かれていた。俺の端末に目を戻すと、「シャラン」と言う名前のプレイヤーのキル数が一位になっていた。

「白がハマってるって言ってたから私も練習したのー!えへへ。」

そう言って笑う紗蘭の顔に俺は見とれてしまう。自分は負けたはずなのになぜか見とれてしまう。

「紗蘭がこっそりゲームやってるなんて珍しいね。」

俺がそう言うと紗蘭は少し舌を出して言った。

「ふーん!私だっていつも良い子ちゃんの優等生ってわけじゃないのよ!」

なぜか威張ってそういう紗蘭を見て俺は呆れて笑ってしまう。今考えたら殴ってでも紗蘭を黙らせればよかった。今考えたって無駄なのは分かってるけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る